【第四章 モルヒネが効かない場合】

{4.2.鎮痛補助薬}

  4.2.1.「非ステロイド消炎鎮痛剤」

 インドメタシンなどの非ステロイド消炎鎮痛剤は、単独ではモルヒネよりもかなり弱い鎮痛剤であり、常用量の2〜3倍の量を限度として、それ以上いくら増量しても鎮痛効果は増強しない。一方、モルヒネは量を増せば効果も増すが、副作用を心配するため量を控えたい場合には、非ステロイド消炎鎮痛剤の併用が効を奏することがある。

 癌の骨転移による疼痛は癌疼痛の中でも鎮痛剤が効きにくいものの一つであるが、モルヒネにインドメタシンの坐剤ないしは内服を併用すると、モルヒネ量をあまり増量しなくてすむ。

 非ステロイド性鎮痛剤の坐薬をアンペックと同時に使う場合は、油脂性基剤のものを選ばないとアンペックの効果が落ちる。(ボルタレン坐は油脂性だからよいが、インダシン坐薬は水溶性のためモルヒネの吸収が落ちる)
平賀先生(国立がんセンター病院)講演より

 非ステロイド性消炎鎮痛剤には天井効果(増量しても鎮痛効果は増加せず、副作用のみ増加すること)があるので、臨床的にはアスピリンで1日4gまで、ボルタレンでは1日100mgまでとする。
,今月の治療,4,4,14

*5
 癌患者に骨転移痛があるときの緊急な痛みのコントロール法として、アスピリン 300〜900mgを4〜5時間毎(1日最大4gまで)、またはナイキサン500mgを1日2回、またはメナミンの徐放錠200mgを1日2回使用する。
,緩和ケア実践マニュアル,,,32

*5
 NSAIDsの選択基準として、経済性からブルフェン、強さからナイキサン、インダシン、消化管障害はレリフェン、オステラック。腎障害にはレリフェン、クリノリル、皮膚障害(発疹以外)が現れたらフェルデン、アスピリンを選択する。
,ターミナル・ケアの症状緩和マニュアル,,,35

*5
 複数のNSAIDsを組み合わせることで、一種類あたりの投与量を減らし、副作用を軽減することはできない。NSAIDs同士の多剤併用はかえって鎮痛効果を減弱させると考えられ、副作用発現率も高くなる可能性が高い。仮に頓用であっても、経口投与に坐剤や注射剤のNSAIDsを併用することも同様であり避けるべきである。
,ターミナルケア,6,1,8

*5
 骨転移の痛みでは、特定のNSAIDsがより有効であることが証明されていない。しかし、さまざまな薬剤を組み合わせても十分な鎮痛が得られない場合、NSAIDsの種類の変更が有効な可能性はある。
,ターミナルケア,6,1,8

   a.「ロピオン」

 骨転移の痛みに対してはロピオンの注射が非常によく効く。ヴェノピリンと同等か、もう少し効果があると思われる。
,がん疼痛緩和とモルヒネの適正使用,,,87

 小児・老人などのプアリスク患者に対する処方として、ロピオン(50mg)2Aを生理食塩水100mlで希釈し25mlずつ1日4回に分けて点滴静注するという方法がある。
,今月の治療,4,4,29

 NSAIDsが効く疼痛であるかどうかの判断にはロピオンのワンショット静注がいい。
,今月の治療,4,4,74

*4
 ロピオンは従来の注射剤に比べて、血圧低下は少ないとされている。静注時、特有の臭いや味を訴える場合があり、そのようなときには生食20〜50mlに溶解して投与すると良い。
,ターミナルケアマニュアル第3版,,,26

*5
 ロピオンによる嘔気・悪寒などの発現は、投与速度よることが大きい。また、アルブミン製剤と凝集を起こすので、同一カテーテルを介して注入する場合も注意を要する。
,ターミナルケア,6,1,20

*5
 脂肪乳剤にロピオンを3〜4アンプル混入させたものをIVHの側管から24時間かけて点滴投与する方法も、発汗が少なく鎮痛効果が安定しているので、患者に好評である。
,ターミナルケア,6,1,37

  4.2.2.「アセトアミノフェン」

*4
 非オピオイド鎮痛薬にはNSAIDsとは別にアセトアミノフェンもあげられている。この薬剤には解熱鎮痛作用はあるが、抗炎症作用はほとんどない。また、胃への障害は生じないが、用量依存的に肝機能障害を生じるため注意が必要。日本バプテスト病院ホスピスでは1500〜2000mg/日を標準投与量としている。本剤は鎮痛効果がある程度投与量に依存するため、投与量の増量が可能である。1回投与量1000mg、1日投与量4000mgまでは安全とされている。
,がんの症状マネジメント,0,0,37

 アセトアミノフェンは末梢性鎮痛作用と解熱作用に関してはアスピリンに匹敵するが、胃腸障害を起こさないので使用しやすい。非ステロイド系消炎鎮痛剤とは異なり抗炎症作用はない。
,がん疼痛緩和とモルヒネの適正使用,,,79

*4
 特別な場合として、ナプロキセンで安静時の痛みがほとんど消失したが、体動時の痛みがごくわずかに残る程度の痛みの場合に、アセトアミノフェンを追加投与することがある。
,がんの症状マネジメント,0,0,38

*5
 他のNSAIDsと比較した場合のピリナジンの長所は、血小板に対する影響がないことで、血小板減少症の患者にも使いやすい。また、相対的に安価である。
,癌性疼痛治療のガイドライン(米公式),,,42

*5
 欧米において比較的アセトアミノフェンが使用される理由は、胃腸障害が全くないことと、血小板機能を抑制しないことがある。
,ターミナルケア,8,2,127

*5
 ピリナジンでは消化性潰瘍を生じない。アスピリンのような出血時間の延長はなく、尿酸の排泄に影響しない。アスピリン喘息患者に対する交差反応は少ない。鎮痛作用機序は不明であるが、炎症部位ではなく中枢レベルでの作用が考えられている。
,ターミナルケア,6,1,21

*5
 アセトアミノフェンの有効作用時間は4〜6時間であり、適切な鎮痛には4〜6回、4〜6時間毎の投与が必要である。
,ターミナルケア,6,1,21

  4.2.3.「エルシトニン」

 エルシトニンは悪性腫瘍の骨転移による痛みの軽減に使われる。疼痛に対し50〜60%の改善率を示し、放射線、鎮痛剤投与によりコントロールできなかった症例にも70%の有効率がある。
,癌の疼痛治療,,,52

 エルシトニンは、機序不明ながら癌の骨転移痛に著効を示すことがあり、これといった副作用がないこともあり、最近よく用いられている。40〜80単位を連日筋注あるいは点滴静注する。1週間連用して効果がなければ、中止する。
,がん終末期の症状コントロール,,,112

  4.2.4.「アレディア」

*4
 アレディアは、ホルモン療法、化学療法ないし放射線療法などの抗腫瘍治療と異なり、腫瘍細胞に直接作用するのではなく、骨病巣部における腫瘍細胞の増殖環境に影響を与えて、疼痛抑制効果及び抗腫瘍効果を発揮するという特性を有する。本療法は副作用も少なく、全身状態不良な末期癌患者にもまったく問題なく施行可能な治療法である。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法,,,5

*4
 報告によると、4例の骨転移痛のため麻薬の投与を受けながらも寝たきり状態の患者にアレディア45mgを2週間に1回、効果発現後は1ヶ月に1回投与を行った。疼痛改善までの期間は1〜3ヶ月であった。中にはオピオイドの投与を必要としないほど、疼痛の改善が見られた症例が含まれており、モルヒネでコントロールできない場合に期待できる薬物療法と思われる。
,モルヒネによるがん疼痛緩和,,,237

*4
 アレディアの初回投与は30mg/bodyないし、45mg/bodyが適当である。基本的には、15〜45mg/body/weekが骨転移ないし骨浸潤による癌性疼痛に対し疼痛軽減効果が期待できる至適投与量である。欧米では90mg/bodyの1ヶ月毎投与が標準的となりつつある。投与速度は、7.5〜15mg/hourが基本とされていたが、現在は1mg/分の投与速度が頻用されている。アレディアは500mlの生食に溶解して点滴静注するのを基本とするとよい。しかし、末期癌患者で500mlの容量負荷が多すぎると思われる症例や短時間での投与を望む症例には、100ml程度の生食に溶解して投与してもかまわない。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法,,,33

*4
 アレディアは溶骨性病変のみならず、造骨性病変を主体とする骨関連病巣に対しても有効である可能性が高い。とくに造骨性病変を好発する前立腺癌では、その有効性が広く認められている。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法,,,55

*4
 高カルシウム血症の有無によるアレディアの疼痛軽減効果には差は見られない。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法,,,61

*4
 末期癌患者において病的骨折が発生した場合、QOLの低下は著しい。このため、下肢長管骨に溶骨性病変が存在する場合には、疼痛が存在しない場合(頻度は少ない)やモルヒネ剤で疼痛制御が良好に得られている場合でもアレディアを使用する意義は大きい。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法,,,76

*4
 アレディアは代謝を受けずに腎を唯一の排泄経路とする。しかし、本剤の投与によって明らかな腎機能障害が発生したとの報告はこれまでない。さらに高カルシウム血症に対しての臨床治験データでは、高カルシウム血症の改善と相俟って血清クレアチニン値が低下し、逆に腎機能が改善したとの結果が得られている。それゆえ、腎機能障害患者では、初回投与時のみ若干投与速度を遅く(4時間程度)して注意を払う必要はあると思われるが、腎機能障害の存在そのものが本療法の適応の是非を判断する因子とはなり得ない。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法,,,43

*4
 アレディアを長期に継続しても、カルシウムホメオスターシスには影響が生じないことが判明している。また、ダイドロネルで指摘されていた石灰化阻害(骨軟化症の発生)は、アレディアの場合、骨吸収抑制作用を発揮する投与量と石灰化抑制作用を発揮する投与量が近接していないため、危惧する必要はない。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法,,,44

*4
 アレディアの副作用としては、発熱、無症候性低カルシウム血症が最も一般的である。発熱の頻度は約10〜20%とされている。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法,,,41

*4
 アレディアの主な副作用としては、軽度の発熱(投与後24〜36時間以内に出現し、約20%の患者で2日程度持続する)、悪心、嘔吐、低リン血症、低マグネシウム血症などの電解質異常、不整脈(短時間の投与で起こりやすい)などが報告されている。
,ターミナルケア,7,2,126

*4
 アレディアには肝機能障害の副作用が存在するため、肝硬変を合併する患者や肝臓転移を併発している患者にアレディアを投与する場合には、若干の注意を払うべきであるが、実際にはほとんど問題となることはないと思われる。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法,,,17

*4
 アレディアの最も問題となる副作用としては、非常に頻度は少ないものの、耳鼻科的障害があげられる。本剤を投与された耳硬化症患者に不可逆的な難聴、耳鳴りが一例ずつ報告されている。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法,,,45

*4
 アレディアとエルシトニンを比較した場合、エルシトニンにはエスケープ現象が必発であり、また疼痛軽減の効果持続時間が短い。エルシトニンには抗体産生の可能性があり、臨床的にもショックの発現が認められているが、アレディアにショックの報告はない。高カルシウム血症是正の効果発現の時間はエルシトニンの方が短い。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法,,,99

  4.2.5.「ダイドロネル」

*4
 報告によると、9例の骨転移痛の患者にダイドロネルを経口投与した。9例中5例は5mg/kg/日から投与を開始し、約3週間で良好な除痛が得られ、骨転移痛はすべての患者で緩和された。中にはオピオイドの投与を必要としないほど、疼痛の改善が見られた症例が含まれており、モルヒネでコントロールできない場合に期待できる薬物療法と思われる。
,モルヒネによるがん疼痛緩和,,,237

  4.2.6.「ホルモン療法」

 乳癌のホルモン療法は抗腫瘍効果とは別に、骨転移に対する除痛作用(3〜4割の奏効率)もあり、副作用も少ない。具体的には閉経前の患者では卵巣摘出が一般的に行われている。閉経後患者ではノルバデックス(20mg/日)が第一選択である。卵巣摘出あるいはノルバデックスが無効となれば、次には、ヒスロンH(800〜1200mg/日)を第2選択のホルモン療法として用いる。ヒスロンHが無効となれば、次は化学療法へと移行していく。
 ホルモン療法としてノルバデックスを投与すると初期(1〜2週間)に痛みが悪化する場合があるが、このまま継続すると癌の退縮がみられる。良い兆候なのでやめてはならない。ヒスロンHも同じ。
,癌の痛みハンドブック,,197

*5
 乳癌ではヒスロンHが骨転移による痛みに長期の緩和をもたらす。反応する患者は、1〜2週以内に改善が認められ、1ヶ月以内に最大となる。腫瘍拡張の時期には、他の手段による充分な鎮痛を与えるべきである。
,緩和ケアハンドブック,,,13

*5
 骨転移痛のホルモン療法は、特に前立腺癌や乳癌などに有効な場合がある。ホルモン療法に対し過去に良好な反応を示した乳癌患者は、2回目にも良好な反応を示しやすい。ホルモン療法は、結果を得るために数週間を要し、その間、鎮痛薬のカバーが必要である。
,緩和ケアハンドブック,,,254

*5
 広範な骨転移を示す乳癌に対するホルモン療法の開始後2週間以内に、一過性の高カルシウム血症を示す場合がある。ホルモン療法の開始後数日以内に血清Ca値の上昇と骨痛の増強を認める場合がある。通常、ホルモン療法に対する患者の良好な反応を示唆する。高カルシウム血症が是正されるまで、ホルモン療法を一時的に中止する。
,緩和ケアハンドブック,,,262

  4.2.7.「ケタミン」

*4
 モルヒネを増量しても眠気や吐き気が強くなるだけで鎮痛効果が変わらない場合に、ケタミン2〜5mg/日(意識レベルが下がらない量)を併用するとよい。本剤は体性痛に有効な麻酔薬なので、ニューロパシックペインよりは体動時痛など体性痛に有効と考えられる。しかし、NMDAレセプター拮抗薬であるケタミンはモルヒネへの耐性を回復させ、ケタミンの投与中止後もその効果を持続させる作用も示唆されているので、これにこだわることなくモルヒネを増量しても鎮痛効果が少ないときには、まず1mg/kg/日で開始して効果があるようならば増量し、眠気の増強などの副作用が強くなるようならば中止するのがよい。
,痛みの臨床,,,112

*4
ケタミン持続皮下注入法
 例えばケタミン100mg/日より開始するとき、充電式小型シリンジポンプを使用する場合は、筋注用ケタミン(50mg/ml)を2ml+生食8mlで全量10mlとし、0.4ml/時で持続皮下注する。ディスポーザブル・インフューザーポンプを使用する場合は、筋注用ケタミンを2ml+生食10mlで全量12mlとし、0.5ml/時で一日分となる。インフューザーには5日分の60mlが入る。
ケタミン50〜100mg/日より開始し、24時間後の効果を判定しながら、25〜50mg/日ずつ増量し、最大300mg/日までであれば、ケタミンの副作用がほとんど現れずに鎮痛効果が得られる。モルヒネを内服しているときは、そのまま継続しながらケタミン併用を開始し、効果が不十分なときには、モルヒネ2〜3割増量とケタミンの25〜50mg/日ずつの増量を、効果を判定しながら交互に行うのがよい。

ケタミン持続静注法
 24時間持続の静脈ラインがある患者では、その側管より持続皮下注と同様のケタミンを持続注入すればよい。たとえば、モルヒネ60mg/日の静注で除痛不十分でケタミンを併用するとき、0.5ml/時、5日間タイプのインフューザーに、モルヒネ6ml+筋注用ケタミン2ml+ドロレプタン1ml+生食3mlで合計12ml/日とし、この5倍量、5日分を充填し側管に接続する。ドロレプタンは制吐薬として著効を示すが、ケタミンによる不穏、譫妄などの精神症状の副作用予防としても有用である。

ケタミン使用にあたっての注意点
1.モルヒネと併用し鎮痛補助薬として使うこと
2.除痛が不十分のまま長い時間経過するとニューロパシックペインの病態が悪化(固定化)するためケタミンの開始時期は早い方がよい。
3.ケタミンでチャレンジテストを行うときは極めて少量の2.5mg程度の静注で行うのがよい。これ以上では不快な精神症状や心悸亢進などの副作用が生じて患者に嫌がられることがある。また、テストで有効性が不明でも、モルヒネと併用の24時間持続投与で有効な場合が多く、癌疼痛治療におけるケタミンの使用開始にあたっては必ずしもテストを行う必要はないように思える。
4.持続皮下注ではほとんどの症例で皮膚の発赤や硬結が出る。生食やモルヒネを混入してケタミン濃度を希釈することと、刺入部位を1日おきくらいに替えることが必要である。
5.ケタミンを併用しても効果がない症例は躊躇せずキシロカインを試みる。
,がんの症状マネジメント,0,0,133

*5
 モルヒネが効きにくいといわれる骨転移の痛みに対して、ケタミンの併用により、速やかに除痛されることがある。近年、ケタミンの薬理作用が明らかとなり、脊髄後角の中枢性感作を抑制することや、モルヒネの耐性や依存性の形成を抑制するという研究報告がなされている。ケタミンでひとたび痛みが緩和されるとケタミンは離脱することができ、その後鎮痛効果が持続する。
,ターミナルケア6月増刊号,9,,22

*5
 ケタミンはモルヒネ耐性を予防したり、できてしまったモルヒネ耐性を回復させる作用がある。このため、モルヒネの効果が良好になり、ケタミンを中止できる場合もある。
,ターミナルケア6月増刊号,9,,39

*5
 ケタミンは体性痛や神経因性疼痛に有効性が高いが、内臓痛にも有効とする報告もある。本剤は短期間の投与で無効であっても、中枢神経の過緊張を抑制することが知られており、1〜2週間の投与後に効果がみられる可能性もある。
,緩和医療,1,2,61

*5
 ケタミン投与法は、1日量50〜100mg程度から開始し、必要に応じて加減する。開始量が200mg以上の症例では、めまいや眠気などの訴えが出現しやすい。ケタミンの持続静注や持続皮下注では、悪夢などの覚醒反応が問題になることはない。持続皮下注では、刺入部周辺の皮膚の発赤がみられ、2〜3日ごとに刺しかえが必要なことが多い。
,緩和医療,1,2,61

*5
 ケタミンは、5〜10mgの静脈内テスト投与を行い、効果がある患者に使う。投与方法は本剤1mg/kg、ドロレプタン0.1mg/kg、ドルミカム0.1mg/kgを末梢静脈路より投与し、その後ケタミンを1mg/kg/時の速度で持続投与を行う。この方法を週に1〜2回程度行う。本剤の経口投与も試みられており、90〜240mg・分3で服用させる。
,臨床と薬物治療,16,10,9

 ケタミンは静注をすると幻覚が出てくるため、テスト投与がしにくい。
,今月の治療,4,4,71

*4
 ケタミンは、神経因性や骨転移の強い痛みに1〜2mg/kg/日を持続皮下注や持続静注で投与し、眠気もほとんどなく良好なコントロールが得られる。
,ターミナルケア,7,1,29

 塩酸ケタミンの持続静注法はモルヒネによっても充分な鎮痛が得られない症例、特に夜間に不穏状態を呈する場合に有効である。注入開始からまもなく鎮痛と睡眠が同時に得られ、注入を中止すると覚醒する。同じ量で持続注入すると、量が少ない場合は寝付きが悪かったり、あるいは逆に量が多い場合は日中に残存する場合がある。そこで、就寝時の量を多くして、途中で半分に減量し、4時に注入を停止している。この方法では寝付きもよく、日中への残存効果もない。

薬液の組成:塩酸ケタミン    500mg
        ジアゼパム     50mg (orドロレプタン 20mg)
          + 生理食塩水(or5%糖液)
                       50ml

   ジアゼパムは析出物が現れる場合があるため、ドロレプタンでもよい。
   また、ジアゼパムよりドルミカムの方が使用し易いように思われる。
   使用量はセルシン1A=ドルミカム1Aでよい。

投与方法:持続注入器にて側管から注入(20:00→4:00)
     (持続モルヒネ静注中は併用)
   1. 20:00〜 24:00・・・1.0ml(深い眠りに導入)
   2. 0:00〜 4:00・・・0.5ml(日中の残存効果減少)

試験的投与として上記の量で開始し、効果と副作用を見て、1/2量/晩の増減をする。静脈路が確保されていないときは、皮下注でもよい。
 副作用として不快な浮遊感を経験することがあり、このために本法を拒否する症例が1/3ほどある。そのほかには気管、口腔内分泌物の増加が見られることがあるので呼吸抑制に注意する必要がある。
,痛みの薬物療法,,,209

 ケタミン・ドルミカムの持続投与法の至適量は、鎮静・睡眠状態や副作用を参考にケタミン・ドルミカムの比率はそのままにして投与量の増減で調節する。不快な浮遊感が強いときはドルミカムを、疼痛が強いときはケタミンの増量が効果的なので、症状に応じてケタミン、ドルミカムの比率を変えても良い。
,がん患者の痛みの治療,,,78

 塩酸ケタミン持続点滴法の利点は呼吸.循環が安定し、意識レベルは点滴速度により調節できる。副作用に過度の鎮静、分泌物増加に注意する。
,癌の疼痛治療,,8

*4
 ケタミン注射液は100〜200mg/日、持続皮下注入又は持続点滴にて投与する。持続皮下注入においては筋注用ケタミン(50mg/ml)を使用する。
,ターミナルケアマニュアル第3版,,,55

*4
 ケタミン持続皮下注入法。投与量200〜400mg/日。皮膚の発赤が多く認められる。
,ターミナルケアマニュアル第3版,,,174

*5
 メサドンは日本では使用できないが、作用時間が非常に長く、安価で、投与経路も多彩であり、恍惚感がないため、社会的には問題を起こすことが少ないとされている。NMDA受容体拮抗薬のみとして働くことがわかっており、ケタミン、メジコンよりも強力な薬剤として期待されている。
,ターミナルケア,8,5,409

  4.2.8.「抗不整脈薬」

 鎮痛補助剤として抗不整脈薬が非常に有効である。メキシチール、フレカイニド、キシロカインの持続点滴、持続皮下注を第一選択にして、それが不十分なときに抗鬱剤、抗てんかん剤、また予後との関係を見て慎重にステロイドを使用していきオピオイドと併用することでオピオイドの効きにくい痛みもかなりコントロールされるようになってきた。
,がん疼痛緩和とモルヒネの適正使用,,,77

*4
 抗不整脈が不整脈を誘発することがあり得るので、フレカイニドないし、メキシチールを三環系抗鬱薬と併用することは推奨されていない。
,がんの痛みからの解放 第2版,,,35

*5
 抗不整脈薬は、必ずしも神経因性疼痛でない場合でも、大量のモルヒネ投与によっても鎮痛効果が不十分な場合などにも、併用によって優れた鎮痛効果を期待できることがある。投与量は不整脈治療に用いる量以下で十分と考えられる。投与速度が速まったり、1日投与量が多くなりすぎると、難治性の嘔吐や不穏状態などの極麻薬中毒の症状が出現しやすくなる。
,緩和医療,1,2,61

   a.「キシロカイン」

*4
キシロカイン投与に関するガイドラインは確立されていないが、キシロカインの治療域は1.5〜5μg/mlであり、5μg/ml以上では副作用発現率が高く、9〜10μg/ml以上では中毒域と考えられる。したがって、キシロカイン持続皮下注入法は、ニューロパシックペインに対し有用であるが、治療域は狭く、過量投与を避けるために、血漿中濃度をモニタリングし、血圧や心電図を連続的にモニターする必要がある。
,モルヒネによるがん疼痛緩和,,,146

*4
 キシロカインテストとは、キシロカイン2mg/kgを生理食塩液50mlに溶解し、ゆっくりと15分間かけて静注して効果を確認する方法である。
,ターミナルケアマニュアル第3版,,,52

*4
 神経因性疼痛の患者77名にキシロカインを使用したところ有効率は70%であった。平均投与量は44.9±17.6mg/時間(10〜100mg/時間:中央値40mg/時間)であった。副作用として重篤なものは認めなかった。キシロカインで副作用の出現が疑われるときには血中濃度の測定が不可欠となる。
,ターミナルケアマニュアル第3版,,,52

*4
 キシロカイン持続皮下注入法では、血中濃度を測り5μg/mlを越えないようにする必要がある。皮膚の発赤が多く認められる。
,ターミナルケアマニュアル第3版,,,174

*5
 リドカインの臨床使用に際しては、投与前の心電図と肝機能検査を行う。静脈内リドカインテスト投与は、経口リドカイン製剤の有効性を評価するために行われる。静脈内カテーテルを留置し、患者を十分観察しながら1〜2mg/kgのリドカインを10〜15分で注入する。VASをテスト前、中、後に調べる。多くの場合、患者は耳鳴りや口囲のしびれ、口内の金属味、めまいをテスト中に経験する。疼痛が50%以上軽減する場合、経口リドインを試みる価値がある。
,MGHペインマネジメントの手引き,,,96

   b.「メキシチール」

*4
 メキシチールはTb群に属し、心抑制作用および刺激伝導抑制作用は弱く、心電図波形への影響はほとんど示さず、安全性の面で優れている。投与量は低用量から開始し、通常は150mg/日とするが、良好な効果が現れるまで、また、問題となる副作用が起きるまで数日ごとに同量を増量し、最大投与量は900mg/日と報告されている。WHOは1回150mgを1日2〜4回投与することを示している。増量中は心電図をモニターする必要があり、増量時にはメキシチールの血漿中濃度の測定も考慮するべきである。
,モルヒネによるがん疼痛緩和,,,144

*5
 メキシチールは最も副作用が少なく、最も使用されている経口麻酔薬である。本剤は就寝時150mg経口投与から開始し、約一週間投与する。耐えられれば150mgを1日3回に増量する。疼痛緩和が不十分な場合は、最大投与量の1200mg/日まで緩徐に(5〜7日ごと)増加させる。この方法により、著しい疼痛緩和が得られる場合がある。副作用には不整脈や失神、低血圧、運動失調、振戦などが含まれる。
,MGHペインマネジメントの手引き,,,96

   c.「タンボコール」

*4
 タンボコール(1回50〜100mg、1日2回)はメキシチールより強力で持続性が高い。しかし、陰性変力作用が強く、高齢者や心疾患のある患者、肝・腎機能が低下している患者に投与する場合には注意を要する。心筋梗塞の既往がある場合は禁忌。また、投与開始後は心電図で徐脈やQT延長などがないか確認する必要がある。
,ターミナルケアマニュアル第3版,,,51

*5
 タンボコールは作用がメキシチールと比較して、より強力であり持続性がある。メキシチールで効果が不十分なときに適応とするのがよいと考えられる。投与量は、1回50〜100mgを1日2回投与とする。
,最新緩和医療学,,,66

  4.2.9.「抗鬱剤」

 求心路遮断性疼痛(Deafferentation pain)。痛覚伝導路遮断による痛みで癌による神経浸潤、ビンクリスチン、シスプラチン神経症の痛みがこれに含まれる。治療困難で長期にわたって患者を苦しめる。この痛みにモルヒネは効果がない。比較的トリプタノールが有効なことが多いが副作用も多く使いにくい。トフラニールでは、1回10mgを1日3回投与から開始する。トリプタノールでは1回10mgを就寝前に投与する。効果と眠気や抗コリン作用などの副作用を見ながら数日ごとに増減していく。25mgぐらいでは効果はないが100mg以上の投与を必要とする事は少ない。また、異常感覚痛にはトリプタノールが有効といわれる。
,癌の疼痛治療,,20,末期癌患者の診療マニュアル,,34癌疼痛治療におけるモルヒネの使い方,,213

*4
 抗鬱薬が鎮痛補助薬として有効なのは合併している抑鬱状態の改善によるものではない。通常、鬱病の治療よりも少ない量で鎮痛効果はみられ、その発現も4〜7日とより早い。
,ターミナルケアマニュアル第3版,,,53

*4
トリプタノール、トフラニール、アナフラニールのいずれも力価は等しい。三環系抗鬱薬の鎮痛効果は鬱病の治療量より少量で認められ、効果も早く現れる。また患者の気分の変化を伴わずに鎮痛効果があり、抗鬱作用と鎮痛作用は必ずしも関連しない。したがって、抗鬱薬が有効であったからといって、精神的な痛みであったと考えることは短絡的である。
,がんの症状マネジメント,0,0,122

*4
 三環系抗鬱薬では60mg以上投与しても、痛みの性質、強さとも変化がない場合にはそれ以上増量しても効果がないことが多い。
,がんの症状マネジメント,0,0,123

*4
 抗不整脈が不整脈を誘発することがあり得るので、フレカイニドないし、メキシチールを三環系抗鬱薬と併用することは推奨されていない。
,がんの痛みからの解放 第2版,,,35

*5
 三環系抗鬱薬の有効性の高い疼痛は”焼けるよう””しめつけられる””つっぱる””しびれる”と表現される持続性の疼痛である。一方、疼痛が間欠的であったり、体位や動作によって誘発されたり、短期間に増強しているような場合には無効である場合が多い。
,緩和医療,1,2,59

   a.「トリプタノール」

*4
 トリプタノールは欧米の成書には1日25〜75mgを初期投与量とされているが、末期癌患者では副作用のため増量は難しいことが多い。
,ターミナルケアマニュアル第3版,,,54

*4
 トリプタノールでは効果発現量は約40mg、最大効果は約60mg程度であった。効果発現は投与開始から5日以内、最大効果は10日以内に認められる。有効率は疼痛の性質により異なるが、持続的な症状での有効率が高く、突発的な痛み、体動に伴う痛みには無効であった。
,がんの症状マネジメント,0,0,123

*4
 トリプタノールの初期投与量は経口で10〜25mg就寝前、高齢者は10mg。その後、1〜4週間で約50〜125mgまで増量。鬱状態に対応するために150〜300mgまで増量する必要もある。十分な鎮痛効果に達するまで1〜4週間かかる。
,がんの痛み治療のすべて,,,168

*5
 トリプタノールは三環系抗鬱薬の中では最も効果が強いと考えられている。鎮痛のために100mg以上必要なことはまれで、効果がないまま同じ投与量を長時間維持していても効果は期待できない。また、60mg以上増量しても効果のない症例では無効である可能性が高い。
,緩和医療,1,2,59

*5
 トリプタノールは全身状態が著しく低下している患者において、眠気のために増量が困難であることがある。口渇はほぼ全例に認められ、増量により増強する。白虎加人参湯の有効な場合がある。緑内障患者では禁忌とする意見もあるが、ピロカルピンの点眼の併用で投与可とする意見もある。心疾患のある患者では血圧の変動や不整脈の出現に十分な観察を行う必要がある。
,緩和医療,1,2,59

   b.「トフラニール」

*4
トフラニールは通常1日25〜300mgを投与する。十分な効果が出るまで数週間かかる。
,がんの痛み治療のすべて,,,169

   c.「アナフラニール」

*4
 アナフラニール注射液は1回12.5〜25mg、ブドウ糖液500mlに溶解し、2〜4時間かけて点滴静注。即効性があり点滴静注が可能なので、経口投与が困難な場合に有効である。
,ターミナルケアマニュアル第3版,,,54

   d.「パートフラン」

 しびれ感などの異常感覚が主の場合はパートフラン(25mg)2〜3錠、分2〜3がある。三環系抗鬱薬の中で鎮静作用が少ない。
,今月の治療,4,4,35

  4.2.10.「抗痙攣剤」

*5
 抗痙攣薬は神経細胞の異常な興奮を抑制するもの(テグレトール)と、発作の広がりを抑えるもの(フェニトイン)、GABA受容体に作用し、脳内抑制系を賦活するもの(デパケン、ランドセン)などに分けられる。一つの薬剤が無効であっても、ほかの薬剤への変更が有効である場合もある。
,緩和医療,1,2,60

*5
 抗痙攣薬は、安静時に発作的に繰り返されるような疼痛が適応である。患者の訴えとしては”電気が走る””痛みが走る””鋭い痛み””指すような痛み”などが”突然来る”と表現される性質の疼痛に有効である。しかし、特定の体位や体動によって誘発される疼痛では、同じような性質の疼痛であっても効果が期待しにくい。鎮痛に必要な投与量は抗痙攣作用を期待する場合と差がないと考えられている。
,緩和医療,1,2,60

   a.「テグレトール」

*4
 抗痙攣薬を使用する場合、1つが無効でも、種類を変更すると効果がある場合がある。有効な場合は増量に伴って痛みの発作が減り、痛みの強さも軽減する。増量によって一気に症状が軽減するような効果の現れ方が多い。体動によって生じる電撃痛には無効な場合が多く、安静時に発作的に繰り返される痛みには極めて有効である。テグレトールを用いた場合、これらの痛みには70%以上で有効であり、効果発現は200mgで最大効果は平均400mgである。投与開始後1〜2日で効果発現することが多い。
,がんの症状マネジメント,0,0,121

*4
 抗痙攣薬が有効な場合には、増量によって一気に効果が現れる。体動時に生じる電撃痛には無効な場合が多いが、安静時に発作的に生じる痛みには極めて有効とされている。報告ではテグレトールを用いた患者において、これらの性質の痛みの70%以上で有効であり、投与開始後、1〜2日で効果発現が見られることが多いとしている。
,モルヒネによるがん疼痛緩和,,,138

 テグレトール、アレビアチン、デパケンは、神経の異常発射を抑制する作用がある。Deafferentation painにみられるような刺すような痛みや電撃痛にテグレトールが有効といわれる。テグレトールの開始量は1日100〜200mgで様子を見ながら3〜4日ごとに100mgずつ増量する(最高600mg/日)。具体的には、睡眠補助をかねて、就寝前1錠(200mg)を内服させ、日中の眠気がなくなるか軽減したら、朝100mg、昼100mg、就寝前200mgに増量し、さらに600mg分3へと増量する。副作用としては、悪心、嘔吐、運動失調不安定感、眠気、混乱があり、もし出現すれば減量または中止する。また、骨髄抑制があるので、放射線、化学療法の患者には慎重に投与する。
,癌疼痛治療におけるモルヒネの使い方,,213,末期癌患者の診療マニュアル,,34,癌の痛みハンドブック,,115

*4
 テグレトールは投与初期や増量直後にはふらつきで転倒などが生じやすいのであらかじめ指導する。直腸内投与(細粒)は経験上、経口投与と同レベルの血中濃度であった。三環系抗鬱薬を併用する場合には、投与量を減量(300〜400mg以下)する必要がある。
,がんの症状マネジメント,0,0,121

*4
 テグレトールの投与量に関してWHOでは、開始量を100mg1日2回として2〜3日ごとに200mgずつ増量する方法を示している。このように低用量から投与し、問題となる副作用が出現せず、また、血漿中濃度がてんかん発作の有効治療域の上限を超えない限りは、良好な効果が現れるまで増量し、最高1200mg/日まで増量可能とされている。ただし、十分に増量しても効果がない場合、長期的に維持しても症状が軽減することは少ない。
,モルヒネによるがん疼痛緩和,,,139

*4
 テグレトールは三環系抗鬱薬との併用で代謝が遅延することが報告されているので、併用する場合には双方の投与量を減量するか投与間隔をあけることが勧められている。
,モルヒネによるがん疼痛緩和,,,139

*4
 テグレトールは他剤との相互作用も多い薬剤である。プリンペランとの併用でテグレトールの血漿中濃度が急激に上昇し、中毒症状が現れることがある。
,モルヒネによるがん疼痛緩和,,,141

 鎮痛補助剤としてのテグレトールは眠気や運動失調などの副作用が多く、モルヒネと併用するとさらに副作用がまして使いにくい。最近は抗不整脈薬(メキシチール、タンボコール、キシロカイン)をよく使う。
,がん疼痛緩和とモルヒネの適正使用,,,94

   b.「デパケン」

 デパケンは血中半減期が長く鎮静作用がある。夜1回の投与とし通常は500mg、高齢の場合200mgで開始し3〜4日ごとに増量し1000mg〜1500mgとする。蓄積が起こりうるのでそのときは減量する。
,癌疼痛治療におけるモルヒネの使い方,,213,末期癌患者の診療マニュアル,,34,癌の痛みハンドブック,,115

 電撃様疼痛などの発作痛が主の場合、デパケン(200mg)2〜6錠、分2〜3がある。
,今月の治療,4,4,36

*4
 デパケンは通常、250mgの投与から始め、1日に1回あるいは2回投与する。増量して500mgを1日3回まで増やす。効果が頂点に達するまで1〜4時間かかり、傷みが緩和されるまで1〜3週間かかる。
,がんの痛み治療のすべて,,,172

*4
 デパケンは刺すような痛みを伴うニューロパシックペインにも有効であることが報告されている。
,モルヒネによるがん疼痛緩和,,,143

   c.「アレビアチン」

 アレビアチンは1日100mgで開始し、25〜50mgずつ徐々に増量し1日250〜300mg以下とする。副作用はテグレトールと同様であるが投与中止を要するような副作用が出ることはまれである。
,癌疼痛治療におけるモルヒネの使い方,,213,末期癌患者の診療マニュアル,,34,癌の痛みハンドブック,,115

 アレビアチンは電撃痛で刺すような症状を特徴とするニューロパシックペインに対しても効果的であることが報告されている。
,モルヒネによるがん疼痛緩和,,,142

   d.「ランドセン」

*4
 ランドセンは通常、1日に2回、0.5mgの投与から開始する、その後徐々に増量し、1日に4回1mgまで増やす。十分な効果に達するまで数週間かかる。
,がんの痛み治療のすべて,,,173

*4
 ランドセンは刺すような痛みを伴うニューロパシックペインにも効果的であることが報告されている。また、モルヒネによるミオクローヌスに有効である。
,モルヒネによるがん疼痛緩和,,,143

*5
 ランドセンは0.5mg就寝前1回投与で、4〜6日ごとに副作用に注意しながら0.5mgずつ増量する。増量後は投与回数を2〜3回にする。副作用としては鎮静作用、疲労感が投与初期に半数程度でみられるが反復投与では改善することが多い。唾液や気道分泌の亢進が問題となることがある。
,緩和医療,1,2,61

  4.2.11.「ステロイド」

   a.「疼痛に対するステロイドの使用」

 脳腫瘍ないし癌の脳転移による頭痛にたいしては、モルヒネ単独よりも大量のステロイド剤を併用することが効果的である。
 癌による随伴性炎症が疼痛の原因になっている場合にも、モルヒネとステロイド剤の併用は非常に有効である。
,臨床と薬物治療,58,76

 急激な神経圧迫のような痛みにはソルメドロールを1日500mgか1000mgで、3日から5日使って、漸減していく形を取る。予後が1、2ヶ月ならそのまま続けるが、半年から1年と考えられる場合は漸減して切る。
,今月の治療,4,4,72

*4
 ターミナル前期の後半からターミナル中期では、ステロイドは腫瘍周囲の浮腫や炎症の減少、周辺組織の圧迫軽減など鎮痛補助薬としても有効で、その適応範囲は非常に広い。
,ターミナルケアマニュアル第3版,,,6

*4
 肝腫瘍や骨盤内腫瘍、頭頸部腫瘍などのように限られた空間内で腫瘍が増大するときに、なんともいえないような圧迫感や緊満感が出現することがある。このような痛みには、ステロイドの投与が必要になってくる。
,ターミナルケアマニュアル第3版,,,21

*4
 神経圧迫による痛みにはプレドニン20〜40mgかデカドロン4〜6mgを1日量として用い、1週間後までに漸減して維持量とする。維持量とは痛みが緩和するのに必要な量である。プレドニンの維持量は15mgほど、デカドロンは2mgほどとなることが多いが、時には十分な効果を維持するのにもっと多い維持量が必要となることがある。
,がんの痛みからの解放 第2版,,,38

*4
 頭蓋内圧迫による痛みの場合には、最初の1日量をデカドロンの8〜16mgとするとよい。1週間たったら漸減して維持量に至る。脊髄圧迫による痛みでは、施設によりもっと多量、例えば初回1日量100mgを用いている。これを減量して放射線照射中には1日量16mgを維持量としている。
,がんの痛みからの解放 第2版,,,38

*5
 脊髄圧迫が起こりかかっているときには、放射線治療専門医、整形外科医、脳神経外科医に相談すべきであるが、その前に、デカドロンやリンデロンを1日16mgを分割投与しておく。これらの薬剤の投与は脊髄圧迫の初期の緊急処置として有用性が証明され、この投与によって診断に必要な時間が少し余分にとれることになる。
,緩和ケア実践マニュアル,,,32

*5
 骨転移による病的骨折を起こした場合、メドロール80mg+0.5%ブピバカイン10mlの骨折部注入は、数日間の疼痛コントロールをもたらす場合がある。
,緩和ケアハンドブック,,,256

   b.「疼痛以外の症状に対するステロイドの使用」

 コルチコステロイドはモルヒネ等の鎮痛剤と共に用いることによって単独使用時よりも優れた除痛が得られ、また副作用を軽減させる鎮痛補助剤としての役割と非特異的ないわゆる全身症状の改善を目的とする役割を持っている。
末期癌患者に以下の適応でコルチコステロイドが使われる。

(適応)

1.非特異的な使用
食欲増進、自覚的な元気さの増進、体力の改善

2.鎮痛目的の使用
頭蓋内圧亢進、神経圧迫、脊髄圧迫、転移性関節痛(骨転移痛)

3.鎮痛以外の特異的な使用
高Ca血症、対麻痺の初期、癌性ニューロパチー、上大静脈閉塞、癌性リンパ管炎、喀血、閉塞(気管支、尿管、小腸)、癌性心膜炎、直腸からの分泌物(坐剤)、発汗、内分泌療法、放射線照射による炎症の緩和、巨赤芽球性貧血
,末期癌患者の診療マニュアル,,32,癌の疼痛治療,,52


(初回投与量及び維持量)

 多くの適応例ではデキサメタゾンを1日1回4mg投与し10〜14日後に維持量2mgに減量する。これがあてはまらない場合を以下に示す。

 

初回投与量

維持量

神経圧迫 4mg1日2回 2〜4mg/日、または減量
頭蓋内圧亢進 4mg1日2〜4回 多様
脊髄圧迫 6〜8mg1日4回
(ときに100mg/日もある)
多くの場合放射線治療後に減量

必ず成功するとは限らないが、まず処方を試みる。5〜10日後に見るべき改善がなければ3〜4日かけて減量し、中止する。
(注)フェニトインと併用するときはデキサメタゾンの代謝を亢進させるためデキサメタゾンの増量が必要。プレドニゾロンは影響を受けない。
,末期癌患者の診療マニュアル,,32,癌の疼痛治療,,52

 ステロイドは、その適応となる症状が出現し、かつ予後が数ヶ月と思われる場合に、投与を開始する。
 淀川キリスト教病院ホスピスでは以下の理由からリンデロンを使用している。

1.作用が強力(プレドニゾロンの7倍)
2.生物活性の半減期が長い(36〜54時間)
3.塩類代謝の副作用がない。
4.錠剤が非常に小さく飲みやすく、投与量を調節しやすい。

 リンデロンの投与量は1日1〜2mgの少量から開始し、効果を見ながら必要に応じて徐々に増量していく。

 ただし、頭蓋内圧亢進、脊髄圧迫、上大静脈症候群などの病態や予後が一ヶ月以内の場合は、症状の程度に合わせて始めから大量(1日4〜16mg)に投与する。
,ターミナルケアマニュアル第2版,,,142

(癌患者におけるデカドロンの投与法。)

 化学療法や放射線療法後の食思不振や衰弱のある患者で、まだ長期の予後(1年を超える)を期待できる場合は0.5〜1mg/日を1〜2週間使用する。全身状態が改善されれば早期に漸減、離脱する。

 有症状で予後が6ヶ月前後と見込まれる場合は、躊躇することなく症状に併せて思い切って使用する。単なる食思不振だけでは0.5〜1mg/日、転移による痛みや消化管の通過障害、呼吸不全や頑固な咳の場合4〜10mg/日を初期投与とする。数日以内で改善がみられれば漸減し維持量とする。
,臨床と薬物治療,73,188

*5
 生命予後が1ヶ月以内でステロイドを投与した方がいいような症状、具体的には全身倦怠感がある場合には躊躇しないで使っていい。しかし、生命予後が2ヶ月以上ある場合にはステロイドを使わないで症状緩和することが望ましいと思われる。
,ホスピス・緩和ケア白書,,,28

*5
 癌悪液質に対するステロイド投与は、全身倦怠感や食欲不振に効果がある。しかし、病状が進行し生存期間が短くなると、投与量を増加してもその有効率は低下する。特に予後が1週間未満になるとステロイドの効果はほとんどなく、鎮静などの他の方法を考慮する必要があると考えられた。
,最新緩和医療学,,,88

*4
 欧米の報告ではステロイドとしてはデカドロンの使用が多い。理由は、高力価であること、ミネラルコルチコイド活性がほとんどないこと、作用時間が長く1日の投与回数が少なくてよいこと、食欲亢進作用が他のステロイド剤に比べて強いこと、などがあげられる。
,ターミナルケア,5,4,264

ステロイドによる鎮痛に関しては 4.2.11.「ステロイド」を参照してください。

*4
 ステロイドは、末期状態による食欲低下に対し非常に有効な食欲増進剤となる。ターミナル中期であれば躊躇せず使用する。
,ターミナルケアマニュアル第3版,,,76

 癌による腸管内腔狭窄は必ず炎症性浮腫を伴い、これが狭窄を強める。癌終末期では癌自体にはもはや治療に反応しないことが多いが、炎症性浮腫には副腎皮質ホルモンが奏効することがあり、時に狭窄の程度を軽減し、自覚症状を緩和する。デカドロンかリンデロン8〜12mg/日を連日1週間使用し、以後漸減する。H2ブロッカーを必ず使用する。
,がん終末期の症状コントロール,,,114

 呼吸困難に対しても、ステロイド剤の併用は効果がある。
,臨床と薬物治療,58,76

 ステロイドは各種炎症を抑え気管・気管支の狭窄、腫瘍周囲の浮腫を軽減させて呼吸困難を改善させる。リンデロン、1回1〜4mg、1日1回朝または2回朝昼。
,ターミナルケアマニュアル第2版,,,101

   c.「ステロイドの問題点」

 ターミナル患者におけるステロイドの副作用を以下に示す。

1.口腔内カンジタ症は約30%の患者に出現。イソジンガーグル、マイコスタチンなどを使用し、難治性の場合、ジフルカンの静注を行う。
2.皮下出血は約10%の患者に出現する。特に治療法はなく患者に「心配するものではない」と安心させるようにする。
3.消化性潰瘍は約5%の患者に見られる。H2ブロッカーの使用によって予防できる場合がある。
4.感染症。結核の既往がある場合は再燃に気をつける。感染の兆候が見られれば、抗生剤を使用する。ただし、予防的投与は不要。
5.精神変調は1〜2%の患者に見られる。可能であればステロイドを減量もしくは中止する。セレネースの使用も可。
,ターミナルケアマニュアル第2版,,,143

*4
 ミオパチーはコルチコステロイド開始時より体幹部を中心に、急速に筋力の低下と筋萎縮を認める病態である。頻度は少ないが、投与早期から出現することもあり、患者のADLを、極めて低下させる。ステロイドの減量以外に効果的な治療はないが、フッ素基を持たないステロイドに変更すれば有効との報告もある。
,ターミナルケアマニュアル第3版,,,168

 在宅癌治療の場合では、モルヒネとステロイドの使い方が地域にまだ広まっていない。ステロイドで食欲不振がせっかくよくなってもホスピスから帰ると、地域の医師がステロイドを危険視して服用を止めさせてしまうことがある。
,癌患者と対症療法,6,1,14


4.1.モルヒネが効かない場合にまず考えること}へ

4.3.その他の鎮痛補助薬}へ

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