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ソニー名誉会長・大賀典雄さんが音楽ホール建設のため退職金全額16億円を軽井沢町に寄付する、とのビッグニュースが流れたのは一昨年(平成15)6月のことでした。それが現実のものとして、私たちの目の前に姿を現し、今年平成17年4月29日グランドオープンしました。バブル崩壊後元気のなかった日本で、これだけの壮挙が実現したのは大賀さんの夫人・緑さんの発案であった、とのこと。
軽井沢大賀ホール
ホールは長野新幹線・軽井沢駅から徒歩7分の矢ケ崎公園の池に面して建っている。この池は冬期凍結により天然のスケート場として賑う。五角形の建物で、トップライトの屋根が遠方から見て特徴的である。
設計はサントリーホールなど数々のホール設計で実績のある鹿島で、大賀さんが理想的な音響を生む形として、頭に描いていたのと同じ五角形サラウンド型の空間が、ステージと客席を包むように配置されている。
客席数は660で、2階は若い人が廉価で利用できる立見席となっている。これを含めると約800名が収容可能となる。ステージは85名のフルオーケストラが可能となるスペースがある。コンサートホールにとって「良い音」とは、すなわち「響き」であり、響きの印象は、直接音の後に壁や天井を経由して到達する初期反射音と、残響時間に由来する。このホールの場合、並行面のない五角形というホールの形状が、客席内のどこにいてもバランスよく均一に到来することを可能にした。後者の残響とはエコーのことでホールのサイズ(容積)・用途に応じて最適時間は異なるが、大賀ホールではオーケストラや室内楽コンサートを想定した1.6〜1.8秒という目標値を設定、客席椅子の素材吸音率まで考慮に入れている。
毎年5月末、新緑が美しい「若葉まつり」のころ1週間前後軽井沢に滞在しているが昨年訪れた時、建築中のホールを見て、完成を楽しみにしていた。念願が叶って今年(平成17年)5月29日入場した。予めチケットは取得していなかったが、旅行者として2階立見席に案内してくれた。ここ軽井沢はリゾート地だけあって、外来者には大変親切な面がある。
幸いに、我等が往年の名テナー「五十嵐喜芳と麻利江のブリリアントコンサート」が開催されており、記憶に残る今年の滞在となった。娘の麻利江さんも父と同じ世界で活躍しているソプラノ歌手で、さすがに二重唱などは息のあった素晴らしいものだった。
席上、麻利江さんが披露しておりましたが、数十年前彼女がローマで生まれた時、父の喜芳さんが病院に駆けつけた時の第一声「子供は女の子か・・・。これで将来、乾杯のうたが二重唱できる」とのことだったとか。実際に当日オペラ・椿姫より「乾杯のうた」を実に楽しくうたっておりました。夢が実現するなんて何とも羨ましく、素敵な話ですね。
通常は上演中の写真は絶対に撮れないが、リゾート地のためかおおらかでOKでした。
このホール付近は標高900mを越えているので都心に比べて季節がほぼ1ケ月遅い。
つつじ、たんぽぽ、少し早いもので、わたげなどが周辺一杯にあり、のどかな田舎の風情十分。
 名   器 イタリアが生んだ天才ピアニスト、アルトゥーロ・B・ミケランジェリが来日コンサートの際、持参し演奏したスタインウェイのコンサートグランドピアノ(D274)がソニーより寄贈された。
音響や楽器のコンディションに一切の妥協を許さず、数々の伝説を残したミケランジェリ本人が、ドイツ・ハンブルグにあるスタインウェイの工場で実際に見て、弾いて、選んだという貴重な逸品だけに、その音色はホールの最大の魅力ともいえる。また、同じくホールには、2002年チャイコフスキー国際コンクールで日本人として始めて上原彩子さんが優勝したときに使用したヤマハの最高級コンサートグランドピアノ(CFVS)も備えられ、スタインウェイと並びピアノ・デュオなどにも使用可能だ。
 パートナー 平成16年9月、軽井沢町は東京フィルハーモニー交響楽団と事業提携を結び、軽井沢町全体としての音楽文化活動への東京フィルの協力と、同楽団の大賀ホールを中心とした町内での演奏活動支援を相互に約束した。日本で最も古い歴史を持つ東京フィルは、平成13年より世界的指揮者チョン・ミョンフンをスペシャル・アーティスティック・アドバイザーに迎えるなど先進的な活動で音楽界をリードし続けている。ヨーロッパの地方都市には、教会やレストランなど町のあちこちを会場にしたその町特有の音楽祭があるが、軽井沢でもそうゆう試みも面白いし、ホールを中心としたオーケストラがあってもいい。クラシックに拘らず、大勢の人が音楽を楽しむ方向性を町と一緒に模索してゆきたい意向の由。
光のデザイン ホールを内外から優しく包む光の総合デザインを担当したのは、世界を舞台に活躍する照明デザイナー石井幹子さん。軽井沢に別荘を持ち、夏には毎週末のように訪れる石井さんは、大賀さんのホール寄贈への思いに共感し、ぜひ協力したいとボランティア同然に今回の仕事を引き受けた。「ドイツ有数の保養地、バーデンバーデンにある音楽ホールで、コンサート以外にもオーケストラが練習風景を公開したりしているのを見て、素敵だなと思っておりました。日本を代表するリゾートの街、軽井沢にもそうしたホールができることをとても嬉しく思っております」と語る石井さん。「どこから見ても美しく見えること、クラシックの格調高い品の良さを損なわないこと、そして永続的に飽きのこないものであること」にこだわったと言うとおり、主張し過ぎることのないシンプルな照明は、木をふんだんに用いたホール内部を暖かく照らす。「個人的には、浅間山をバックに水辺に照らし出される夕方のホールの眺めが気に入っています」。光を受けて悠然と佇むホールの姿は、軽井沢の名所になること間違いなし。
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