全山紅葉、これ以上の贅沢はない

菅沼合掌集落

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金沢番外編
世界遺産 五箇山の里

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国指定史跡であると同時に、ユネスコの世界遺産として登録されている五箇山、少し足を伸ばすと白川郷も近い。金沢からは毎週土、日に東京方面から来る観光客と合流して、日帰りできるコースがある。駅前から高速道路で1時間足らずの近距離だ。藩政時代には、ここが加賀藩の火薬庫として隠れ里的存在だったらしい。幕府の眼を背けるため、この山深い秘境の地を選んだのだ。

陸の孤島と称される富山県南西部の五箇山地方は、世界有数の豪雪地帯でもある。傾斜の大きなかやぶき屋根を持つ伝統家屋・合掌造りが受け継がれ、1995年(平成7)世界遺産に指定された。堅豆腐や山菜、そばなど、自給自足で営んできた人々の食生活が今もこの地に生き続けている。独特の歴史を感じさせる集落の景観に、時を越えて日本の山村文化の原点を垣間見ることができる。山が育ちの私にとっては、紅葉の山々を見ていると体が騒ぐ。それにしても日本の秋は美しい。ここ五箇山で朝もやのかかる集落を眺めていると、ススキ、ホオズキが錦秋の山々を背にして秋風に揺れる。桃源郷とはこんなところか、とつい夢心地になる。(H18(2006).11.12金沢滞在中に訪問)

400年前に建築された、国指定重要文化財「村上家」にて当主の囲炉裏談義と薬草茶の振る舞いを受けた。
その後、合掌の里へ入り山菜料理「深山のひるげ」を賞味した。素朴な山里の味だった。

来年は是非「白川郷」まで足を伸ばしたいものだ。

囲炉裏の煙で岩魚の燻製

郷愁を誘う「囲炉裏」

「合掌造り」とは

合掌造りの最大の特徴は、その名の通り、両手を合わせたような形をしている茅葺の切妻屋根。その角度は約60度。重く積もる雪を滑り落とすために、かなりの急勾配になっている。五箇山の屋根の傾斜は、白川郷よりも若干急になっている。これは、五箇山地方の雪がより湿気を含んで重たいために、雪を落としやすくするための工夫だと言われている。また、合掌造りを発展させたものに、養蚕や塩硝、和紙漉きといったこの地の産業がある。合掌造りは、住居として使われる1階部分の軸組み部と、屋根部分の小屋組み部から成る二層構造になっているが、前記の産業が発達するに従って、作業空間を3階や4階を造って増やし、建物自体が拡大していった。外観で印象的な白の障子窓は、現在はガラス加工されたものもあるが、昔は勿論ただの障子であった。寒さをしのぐために、冬季は茅を外観から巻き付けていた。内部の様子を見学するには、3階建ての私たちが見学した「村上家」が最適だ。雪の重みで根本の曲がったナラの巨木を梁にした"チョンナバリ"、クギを使わない"小屋組み"などを見ることができる。大変な作業である茅葺の葺き替えや冠婚葬祭は、伝統的互助制度「結(ゆい)」により、今も昔も大勢の地域住民によって行われる。人と人とが支えあうようにも見える切妻屋根の形といい、「結」というシステムとして結実したものが、この合掌造りなのかも知れない。