classic salon  NO.4

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クラシック サロン


     H28('16)1.5 
           私のCD
  マーラー 交響曲第5番
マーラー 交響曲第10番嬰へ長調
       交響曲第5番嬰ハ短調
       クラウス・テンシュテット指揮 ロンドン・フィル 
交響曲第10番
この曲は未完の曲で第1楽章のみ残っている。第2次大戦後補筆によって数種の全曲完成版が作られている。中でもイギリスの音楽学者リック・クリックによるものが広く受け入れられている。本日聴いたのは、未完成の第1楽章のみの盤だった。この後に聴く交響曲第5番第4楽章の「アダージェット」の旋律を頭に浮かべながら聴いていた。
26.11.13、27.7.7 試聴済み テンシュテット指揮 ロンドン・フィル
交響曲第5番
この曲はイタリア映画、耽美派の巨匠ヴィスコンティ監督「ベニスに死す」で一躍脚光を浴び有名になった。小説はトーマス・マンの原作だが、ヴィスコンティは主人公をマーラーその人のような音楽家に置き換えて、全編にこの曲の第4楽章「アダージェット」を用い、その音はあたかもこの映画の為に初めから用意されていたかのように響き、それ以来このエロスと死の法悦が隣り合わせのような音楽はマーラーの作品の中でも最大のポピュラーな曲となった。個人的にもこの映画の舞台となったアドリア海に面したリド島のホテル「デ・ヴァン」に宿泊した経験もあり、眼前に広がる白砂青松の海岸は、今でも鮮明に蘇えってくる。主人公は旅先のこのホテルの海辺で、ポーランドから来ている美しい少年に目を奪われる老いた芸術家。彼の内面に起る美への憧憬と現実の生の葛藤を描いた物語だった。美しいもの、純粋なもの、崇高なるものを追及する精神が至る頽廃への誘惑、或いは貴族的なものへの滅び行く姿、これらはヴィスコンティ作品の根底をなすものであり映画「山猫」でも表現されているところだ。ある専門家はこの曲について「第5番は葬送の音楽と結婚行進曲とが混じりあった音楽で別名、精神分裂症だ」と言っている。この一連の試聴会で5回目だったが、この表現も理解できるものだ。音楽は冒頭トランペットのファンファーレで始まり、メンデルスゾーンの結婚行進曲かと勘違いするほどだ。それが一転して葬送行進曲となる。第2楽章は荒々しく暗い。それが又一転、第3楽章は田舎風の舞曲となり、第4楽章は話題の「アダージェット」、最後の第5楽章は第1楽章と対照的な明るさで終わる。実にめまぐるしい変化なのだ。“精神分裂症”とは言い得て妙なのだ。全体で80分の長大な作品だが、マーラーの作品としてはごく普通のものだ。
26.7.8  試聴済み エリアフ・インバル指揮 東京都交響楽団
26.11.13、27.7.7 試聴済み テンシュテット指揮 ロンドン・フィル
私のCD・・小沢征爾指揮 ボストン交響楽団
        H28('16)1.14
 
         私のLPジャケット
           ベートーヴェン
        交響曲第6番「田園」
ベートーヴェン 交響曲第4番変ロ長調 作品60
            カラヤン指揮 ベルリン・フィル
ベートーヴェンは交響曲第3番を完成すると、ただちに第4番に着手した。この第4番に関する詳細な資料は現在一つも発見されていないが、草稿の上に1806年という年代が記されているので、慎重なベートーヴェンにしては珍しく一気呵成に書いたものと考えられている。男性的で力強い第3番「英雄」と第5番「運命」との間に位置している、この愛くるしく幸福感に満ちた第4番のことを、シューマンは「二人の北国の巨人に挟まれたギリシァの乙女」と呼んでいる。ベートーヴェンの全9曲の交響曲の中では、最もロマン的色彩が濃いいが、単に甘美で流麗な情緒を持っていると言うだけでなく、古典的な格調の高さを兼ねている。最終章は音がキラメキ生々と沸き立ちベートーヴェンを聴いた、という充実感を覚える。
26.8.5  試聴済み クライバー指揮 バイエルン国立管弦楽団
26.10.23  同上   スクロヴァチェフスキー指揮 読売日本交響楽団
27.3.17  同上   小沢征爾指揮 水戸室内管弦楽団
27.4.16    同上    スイートナー指揮 シュターツカペレ・ベルリン
27.7.2    同上   ベーム指揮 ウィーン・フィル
27.12.15  同上   スクロヴァチェフスキー指揮 読売日本交響楽団
私のCD・・カラヤン指揮 ベルリン・フィル 

ベートーヴェン 交響曲第6番ヘ長調 作品68「田園」
            プロムシュテット指揮 ドレスデン・シュターツカーペレ
ベートーヴェンが第5番「運命」に続いて作曲したこの第6番「田園」は、自然の中に身を遊ばせ穏やかな心和むゆったりとした曲だ。彼が静養のためしばしば逗留したウィーン郊外のハイリゲンシュタットの田園風景が舞台となっているからだ。然しこの地で過ごしたベートーヴェンの時間が常に穏やかな時であったわけではない。むしろ、苦しい時を過ごしたのがこの地であり、死を決した遺書も書いている。それを思い止らせたのがハイリゲンシュタットの自然の温かさであり、その苦悩と安らぎの時間の集積がこの「田園交響曲」に結実したのだろうか。この曲は珍しくベートーヴェン自身が「田園交響曲」と標題を付けており、各楽章にもそれぞれに標題がある。(詳細は26.12.2記載済み)
第1楽章は「田舎に着いた時の目覚めの喜び」で、お馴染みの旋律から始まる。これはオーストリアの田園地帯に伝わる民謡のメロディをヒントにしたらしい。私達日本人にもすんなりと受け入れられる和みのメロディだ。人類共通の根源に訴えるものがあるからだろうか・・・。第2楽章にはホトトギスやウズラ、カッコーなどの鳴き声をフルート、オーボエ、クラリネットで聴かせる“遊び心”も見られる。ベートーヴェンのもう一つの側面を伺う優しい曲なのだ。第3楽章スケルツォでは、農夫の素朴で楽しげな踊りの光景を想像させ、第4楽章では低音弦が遠雷を告げ激しい雷雨の襲来、ティンバニの効果的な使用などベートーヴェンのオーケストレーションの独壇場だ。やがて嵐は止み引き続く第5楽章では晴れ晴れとした輝かしい気分で充満する。ここにはもう一人のベートーヴェンが存在する。概観してもベートーヴェンは重厚な作品を書いて次にはそれとは対照的な明るく軽快な音楽を残している。交響曲では3番、5番、7番、9番に挟まれた作品がその性格を持っているが、それは一種の息抜きだったのだろうか・・・。
26.12.2 試聴済み フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィル
私のLP・・ワルター指揮 コロンビア交響楽団

ベートーヴェン/リスト編曲 交響曲第6番ヘ長調 作品68「田園」
                   Pf.シブリアン・カツァリス
リストはベートーヴェンの交響曲全曲をピアノ曲に編曲している。27.6.16試聴会では、Pf.グレン・グールドで「運命」を聴いている。その時にも触れているが、モーツァルトの再来とかピアノの魔術師などと呼ばれたフランツ・リストの編曲だけあって、ピアノ1台でオーケストラを見事に表現している。そして、オーケストラにX線を照射しキー音となるピアノの音色のみ抽出表現したかのようにメロディがストレートに耳に入る。これは、非日常の世界であり斬新なレコードコンサートだった。
    H28('16)1.21
 
      私のCD
  ブルックナー交響曲第8番
シューマン 交響曲第4番ニ長調 作品120
        ラファエル・クーベリック指揮
        バイエルン放送交響楽団
シューマンの交響曲の中でこの第4番は一番の傑作と言われている。この交響曲は楽章を区切らず、一つの楽章として連続して演奏されるが、曲想の変化で楽章の移りはよく分かる。また、幸いにLPの場合は片面に2楽章分が収録されており、チェンジによって次の楽章に移ることが分かる。第1楽章のゆったりした序章からやがて第1主題冒頭の動機により次第にテンポを上げて行く。第2楽章「ロマンツェ」の第1オーボエとチェロによる哀調の込められた主題、それに独奏ヴァイオリンが加わり実に美しい響きとなる。第3楽章のスケルツォは軽快なリズムで心地よく印象深い。第4楽章フィナーレは、シューマンの生き生きした情熱に満ちており圧倒的な迫力は高揚感を掻き立てる。
27.10.22 試聴済み テンシュテット指揮 ベルリン・フィル
私のCD・・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィル

ブルックナー 交響曲第8番ハ短調(ハース版)
         ルドルフ・ケンペ指揮
         チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
ブルックナーの交響曲にはよく「原典版」とか「ハース版」の表示がある。これは自分の作品について、人の指摘を受けたりすると気のすむまで書き直したらしい。地味で長大な交響曲を多くの弟子たちが彼の了解を得て大幅に手入れしたためである。この曲は彼自身「私が書いた曲の中で最も美しい音楽」と言って自信を持っていた。確かに第3楽章のアダージョは実に美しい。(27.8.27詳細記入済み)
27.8.27 試聴済み 今回と同じ盤
私のCD・・ギュンター・ヴァント指揮 北ドイツ放送交響楽団(ハース版)
         H28('16)1.26
 
               私のCD
         ストラヴィンスキー
バレー音楽「ペトルーシュカ」
ストラヴィンスキー  バレー音楽「ペトルーシュカ」
             バレー音楽「春の祭典」
             ピエール・ブレーズ指揮
             ニューヨーク・フィル 
             クリーヴランド管弦楽団(春の祭典)
ペトルーシュカ
第1場・・謝肉祭の日ー賑やかな開幕の雑踏が描出される。
第2場・・ペトルーシュカの小屋ー人形芝居の道化人形ペトルーシュカは、恋い焦がれるバレリーナ人形の踊りに一層思いを募らせるが冷たくあしらわれる。
第3場・・ムアー人の部屋ー一座のムアー人人形のところにバレリーナ人形が登場、仲の良いところを見せワルツを踊る。ペトルーシュカが彼女を追いかけて現れるが、ムアー人にさんざん痛めつけられる。
第4場・・謝肉祭の夕方ー再び第1場の賑わいにもどり、前にも増して賑やかさに様々な踊りが続く。そこにペトルーシュカがムアー人に追われて駆け込んでくる。逃げ回るペトルーシュカはついにムアー人に斬り殺されて哀れな生涯を終える。
とに角音楽が凄い。強烈なリズム、耳をつんざく様な金管の叫びが続き、連続する不協和音。これまでの伝統を完全に破壊したこの音楽は、当時の聴衆のどぎもを抜いた、と言われているが、現在の私たちが聴いても心に突き刺さり興奮が収まらない。(H27.3.3コメント済み、参照のこと)

春の祭典
2部編成のバレー曲で、解説書をみると内容は次の通り。
1.大地の賛仰 導入ー春の兆しと乙女たちの踊りー誘拐の儀式ー春のロンドー敵対する部族の儀式ー賢者の行列ー賢者ー大地の踊り
2.生贄の祭り 導入ー乙女たちの神秘的な集いー選ばれた乙女への讃美ー祖先の霊のよびさましー祖先の儀式ー生贄の踊り、選ばれた乙女
1913年パリでの初演は、聴衆に轟々たるスキャンダルの渦を巻き起こした。とに角人々はこんな音楽を聴いたことがなかった。導入部のファゴットのメロディからして極めて異様なもので、ソロではめったに用いられない低音楽器のしかも高い音感の旋律を当て異教的な雰囲気を醸し出す。これまでのクラシックの感覚からは程遠いい旋律の連続で、指揮者もストラヴィンスキーが気が狂ったのではないか、と思ったそうだ。70歳を過ぎたころからオーソドックスな技法に帰ってくるが、彼の88歳の生涯においてたえず作風を変えているため「カメレオンのような作曲家」とも言われている。
27.3.3 2曲とも試聴済み 今回と同じ盤
私のCD・・クラウディオ・アバド指揮 ロンドン交響楽団

ドビュッシー 交響詩「海」
        交響詩「牧神の午後への前奏曲」
        バレー音楽「遊戯」 
「海」、「牧神の午後への前奏曲」
H27.8.11及び18試聴済みにてコメント済み、今回は省略
私のLP・・アンセルメ指揮 スイスロマンド管弦楽団

「遊戯」
今回初めて試聴。初演時観客に渡された解説文によるとシナリオは次の通り。
夕暮れの庭園。テニスボールがなくなって青年と二人の娘がボールを探しに登場する。幻想的な光を3人に投げかける電燈の人工的な照明は、子供じみた遊びを思いつかせる。隠れん坊をしたり、鬼ごっこをしてみたり、口げんかしたり、わけもなく拗ねたりする。夜は暖かく夜空は白い光に染まっている。3人は抱きしめあう。ところが、誰かの手をすり抜けたもう一つのテニスボールが投げ込まれると、魔法は消える。3人の男女は驚き慌てて、夜の庭園へと姿を消す。
バレーの振付家は「テニスをする3人の男女の恋の駆け引き」とのテーマでドビュッシーに作曲を依頼したとの事。最初、ドビッュシーはこのテーマを「馬鹿げており非音楽的」として断ったらしい。結局は報酬を2倍に引き上げて承諾させた、と記録に残っている。余談ながら「遊戯」は子供の無邪気な「お遊戯」ではなく、「恋の鞘当て」を演ずることの掛詞である。
“jeux”は英語の“play”のことなのだ。
    H28('16)1.28
 
     私のCD
     ブルックナー
  交響曲第4番
「ロマンティック
ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第15番イ短調 作品132
          ラサール弦楽四重奏団
1824年に第9交響曲を書きあげるともう自分の仕事は成し遂げたと言うように、ベートーヴェンは残された時間の総てを弦楽四重奏曲の創作に集中した。第12番から第16番までの5曲と「大フーガ」がそれである。50歳に入ってからのこれらの作品は「後期の名作」と呼ばれ、いずれもベートーヴェンの生涯を総括する高い境地に到達した作品である。形式においても全くこだわりなく、第12番までは伝統に従って4楽章形式だか、次の15番は5楽章、第13番は6楽章、第14番は7楽章と言うように過去の楽章形式の枠から完全に自由になっている。全体を通じて心地よい曲だった。
27.4.21、30日 弦楽四重奏曲第12番、第16番試聴済み
27.11.10 弦楽四重奏曲第14番試聴済み いずれもラサール弦楽四重奏団  

ブルックナー 交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
         ルドルフ・ケンペ指揮 ミュンヘン・フィル
この第4番「ロマンティック」を聴くのは試聴会3回目となった。初めて聴いた時、長大で難解と言う先入観にとらわれ余り楽しくなかったが、次第に興味が湧いて来た。娘夫婦と今年の正月、食事をしたとき婿どの(小説家、文芸評論家)が、ブルックナーに纏わるミステリーものを書き、今夏には講談社から出版する、とのことでこの人物に急に親近感を覚え、これまでLPにしろCDにしろ殆ど持っていなかったが、本日CDの交響曲第4番「ロマンティック」を購入、次の曲が手元に揃った。
CD交響曲第4番「ロマンティック」 シノーボリ指揮 シュターツカペレ・ドレスデン
LP交響曲第7番 ショルティ指揮 ウイーン・フィル
CD交響曲第8番、第9番 ヴァント指揮 北ドイツ放送管弦楽団
この第4番には「ロマンティック」と言う標題がついているが、これは彼自身がつけたらしい。その標題の通り彼の純粋な喜び、清らかな自然を心から愛する気持ちと恍惚とした無我の境地が示されている。第1楽章は森の静かなささやきの上にホルンが響き、深い森の姿がでる。嵐が訪れ一瞬森はざわめくが、また元の姿に帰る。第2楽章は挽歌、悲しみの抒情が漂い標題の「ロマンティック」に最も相応しい楽章だ。第3楽章はスケルツォ。「狩りの主題」と記されており、狩人たちの前で食事の間に演じられる舞曲らしい。第4楽章フィナーレは「民衆の祭り」と記されており、各章の主題が現れ渦をまき溶け合って融合している。ブルックナーが残した9つの交響曲の中で最も有名な曲、と言われているのも頷ける。
          H28('16)2.2
 
          私のLPジャケット
  コルサコフ「シェエラザード」
ブラームス ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品77
        Vn.ジノ・フランチェスカッティ
        バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィル
この曲は、ブラームスとヨーゼフ・ヨアヒムとの友情から生み出された。ヨアヒムは19世紀後半のハンガリー出身の大ヴァイオリニストで、無名の頃のブラームスの才能を見抜きリストやシューマンに紹介し、世に出るきっかけを作ってくれた大恩人であり、生涯にわたって厚い友情で結ばれていた。彼はこの暑い友情に報いるため、ヴァイオリン協奏曲を作曲しようと思い立ったが、慎重な性格もあって完成したのは45歳の時のことであった。曲は全体に交響曲的な重厚さを持っており、有名なメンデルスゾーンやチャイコフスキーなどの協奏曲と比べると、やや親しみにくいが、ある人はこの曲はあらゆる協奏曲の中で最高位の曲だ、とも言っている。確かに、繰り返し聴けば聴くほど魅力を感ずる曲なのだ。
27.6.18・・試聴済み 今回の盤に同じ
私のLP・・Vn.リカルド・オドノポゾフ
      カール・バンベルガー指揮 フランクフルト・オペラ座管弦楽団
    CD・・Vn.ナージャ・サレルノ・ソレンバーグ
       エド・デ・ワールト指揮 ミソネタ管弦楽団

リムスキー・コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」 作品35
ホロディン ダッタン人の踊りと合唱(イーゴリ公より)
       合唱 青年合唱団、ローザンヌ放送合唱団
       エルネスト・アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団
交響組曲「シェエラザード」
「シェエラザード」とは「アラビアン・ナイト」(千一夜物語)の中に登場する才色兼備の妃のことで、大昔読んだ「アリハバと40人の盗賊」など面白い短編物語を含む冒険あり、お色気ありの長大な物語なのだ。その雰囲気を音楽にしたもので、管弦楽法を駆使し実に楽しい旋律を聞かせてくれる。全楽章を通じて美しい主題がヴァイオリンで奏でられ、対照的に管弦楽器の迫力に満ちた大音響も臨場感タップリだった。(H27.3.10コメント済み、参照)
27.3.10・・試聴済み カラヤン指揮 ベルリン・フィル
私のLP・・カラヤン指揮 ベルリン・フィル

ダッタン人の踊りと合唱
この試聴会で初めて登場。この曲はボロディンの代表作である歌劇「イーゴリ公」の第2幕で用いられた曲。この歌劇の中でも特によく知られており、単独で演奏されることが多い。「ロシア5人組=新ロシア派」(キュイ、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフ、ボロディン、ピアニストのバラギレフ)の中でもアジア的要素が最も色濃いボロディンの旋律は、我々日本人の郷愁に近く親近感を抱かせる。この歌劇は、草原遊牧民を相手に祖国のために戦うイーゴリ公を主人公にしているだけに随所で異国情緒豊かな音楽を聴くことができ満足感に満たされる。
      H28('16)2.9
 
      私のCD
   グリーグ、シューマン
      ピアノ協奏曲
  
グリーグ ピアノ協奏曲イ短調 作品16
      Pf.クリスティアン・ツィーマーマン
      カラヤン指揮 ベルリン・フィル
この曲は試聴会4回目。冒頭が印象的な曲なのだ。ティンパニが弱音から急速にクレッシェンド、続いて全管弦楽が一挙にジャンと一撃、ピアノのカンという硬質だが透き通った響き、このピアノの出方が非常に印象的だ。続いて現れる第一主題、木管楽器によって奏でられる愁いを含んだ旋律が心を打つ。有名なチャイコフスキーにしてもメンデルスゾーンにしてもヴァイオリン協奏曲の出足の旋律は、一度聴いたら印象に残り忘れられないがこのグリーグもそうなのだ。木管群によるこれらの甘美な旋律は、北欧民謡風のメロディとロマン的な香気がグリーグの個性といえる。北欧の人々は雪に閉ざされた日照時間の短い長い冬を耐えなければならないため、春への憧れや自然に対する賛美の気持ちが強くなるのだろう。グリーグの音楽にはそれらの人々の気持ちと生への肯定を表現していると思う。
27.3.10 試聴済み Pf.ゲザ・アンダ クーベリック指揮 ベルリン・フィル
27.5.26   〃    今回と同じ盤
27.10.29  〃    Pf.リヒテル マタチッチ指揮 モンテカルロ
国立歌劇場管弦楽団
私のCD・・Pf.クラウディオ・アラウ コリン・ディヴィス指揮 ボストン交響楽団
   CD・・本日の盤に同じ

マーラー 交響曲第5番嬰ハ短調
       バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィル
28.1.5 記載済みにつき今回は省略
26.7.8 試聴済み インバル指揮 東京都交響楽団
26.11.13、27.7.7、 28.1.5 試聴済み テンシュテット指揮 ボストン交響楽団
私のCD・・小沢征爾指揮 ボストン交響楽団
   
    H28('16)2.23
 
    私のLPジャケット
    チャイコフスキー
    ピアノ協奏曲第1番
チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 作品23
           Pf.エミール・ギレリス
           ズービン・メーター指揮 ニューヨーク・フィル
あまりにもポピュラーな名曲で、五味さんのコレクションには数が少ないらしく、僅かに今回2回目の登場。しかも、これが前回と同じ盤なのだ。五味さんの性格からかお気に入りの曲は指揮者、オーケストラを変え必ず数種類揃っている。従って本日のようなクラシックファン新米向きの曲はあまり多くないようだ。聴きなれた名曲は何度聴いても心地良い。ホルンの短い序奏に導かれる導入部の大らかなメロデイ、堂々と力強いピアノ、続いて現れる華麗なカデンツァ風のソロ、開始早々から聴く者を虜にしてしまう魅力満載の曲なのだ。ここ暫らく風邪のため外出を控えており、2週間ぶりのコンサートとなったが楽しいひと時だった。以下は27.8.4試聴記参照。
27.8.4 試聴済み 本日の盤に同じ
私のLP・・Pf.ネルソン・フレーア ケンペ指揮 ミュンヘン・フィル
   Lp・・Pf.ソンドラ・ビアンカ バンベルガー指揮 コンセール・ド・パリ管弦楽団

マーラー 交響曲「大地の歌」
      Ms.ジャネット・ベイカー  T.ジェームス・キング
      ベルナルト・ハイティンク指揮
      アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
マーラーは若い時からショーペンハウエルを愛読していて、人間の本質とは「生への盲目的な意志」で、人は目的も意味もなくただ生まれて死んでゆくものである、と考えたショーペンハウエル風の厭世観=ペシミズはもともとマーラーに親しいものであった。この「大地の歌」はそうした無常観に支配されている、と言われている。確かに、第2楽章の「秋に寂しきもの」、ことに第6楽章の「告別」の寂寥感は身に沁みる。「大地の歌」がさらに魅力的なのは、世紀末芸術に通有のクリムトの絵に見られるような耽美的な音の色彩と東洋趣味=オリエンタリズムが加わっているからだろう。余談ながら、クリムトの絵はその色彩感覚が好きでリトグラフを1点購入している。以下27.10.8試聴記参照。
27.10.8 試聴済み 本日の盤に同じ
      28('16)2.25
 
       私のCD
      モーツァルト
    ピアノ協奏曲第25番
モーツァルト ピアノ協奏曲第25番ハ長調 K.503
         ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595 
         Pf.アリシア・デ・ラローチャ
         サー・ゲオルグ・ショルティ指揮 ロンドン・フィル
ピアノ協奏曲第25番
初回(26.8.7)聴いたときは、少々平凡であまり印象に残らなかったが2回目(26.12.23)の試聴会ではその時にコメントの通り、冒頭の部分にベートーヴェンを感じ、全く印象が変わった。正確にはベートーヴェンが先輩のモーツァルトの感化を受けているということだ。事実、ベートーヴェンは研究時代に丹念にモーツァルトのピアノ協奏曲第27番を研究したと伝えられている。さて、この第25番は1786年に完成している。モーツァルト30歳の時で、オペラの傑作「フィガロの結婚」の後の作品。内容的にはシンフォニックな壮大さを感じさせるが華やかさと言う面では些か乏しい。それが初めて聴いたときの解説書を見ると、その原因としてオケの編成からクラリネットを省いているため一般的なポピュラリティと言う点で他の協奏曲ほど高くない傾向にある、とか・・・。反対にトランペットやティンパニの用い方がユニークで、突然の大音響にハットする。聴く回数の増加と共に興味が募る曲だ。私のお気に入りになりつつある。H26.12.23コメント参照。
26.8.7 ピアノ協奏曲第25番試聴済み Pf.ゼルキン アバド指揮 ロンドン交響楽団
26.12.23  ピアノ協奏曲第25番、第27番試聴済み 本日と同じ盤
私のCD・・ピアノ協奏曲第25番 Pf.グルダ アバド指揮 ウィーン・フィル

ピアノ協奏曲第27番
モーツァルトは父が死の床にあった時(1787年)父に宛て次のような手紙を書いている。「私は数年来と言うもの、人間のこの真実にして最良の友(死の事)とすっかり親しくなっております。死の姿は少しも恐ろしくないばかりか、むしろ心を安らかにし慰めてくれるものなのです・・・」。このようなモーツァルトの諦観とも言うべきものが、彼の最後のピアノ協奏曲となった「第27番」なのだ。死の年となった1791年(35歳)の1月に完成したこの曲は、死を予感したかのような澄み切った境地が現れており、しかも驚くばかりの明るさに溢れている。アインシュタインはこの曲について「永遠の戸口に立っている」という名言を残している。26.12.23コメント参照。

ラヴェル バレエ音楽「マ・メール・ロア」
      「高雅で感傷的なワルツ」
      アンドレ・クリュイタンス指揮 パリ音楽院管弦楽団
「マ・メール・ロア」
ラヴェルは大変子供好きな人だった。生涯独身をとおしたが、親友ゴデブスキーの家では友人をほったらかして二人の子供と遊んでいたらしい。この子供たちの為に書かれたのが原曲の連弾用の組曲で、4年後の1912年(37歳)に今のような管弦楽曲に編曲された。彼の作品にはこのようにピアノ曲の後に管弦楽用に編曲したものが多い。「マ・メール・ロア」とは17世紀のフランスの童話作家ペローのお伽噺集の題。日本を初め世界中で「マザー・グース」として有名。この曲は全部で5曲からなっており、お伽噺の妙を幻想的に美しく描いており、聴く人々を童心に誘う。以下の項目をみて大いに童話の世界を想像してほしい。
1.眠る森の精パヴァーヌ
2.小人
3.パゴタの女王
4.森の精と野獣との対話
5.童話の庭

「高雅で感傷的なワルツ」
手許にはなんの資料も無くWikipediaによれば次の通り。この曲は、1911年に作曲されたワルツ集。ピアノ独奏曲として作曲され翌1912年に管弦楽版が作られた。「優雅で感傷的なワルツ」、「高貴で感傷的なワルツ」などの訳題も用いられることもある。ラヴェル自身はこのワルツ集をシューベルトのワルツをモチーフとして作曲したと述べている。初演時作曲者の名は伏せられ、演奏会後に作曲家を当てるというユニークな企画が催された。その際、この曲からラヴェルの曲と見破った聴衆も多かったが、一方ではサティやコダーイの作品と勘違いした者も少なくなかったという。本日のコンサートの最終曲でもあり暖かい暖房についうとうとと聴き流し印象に残ったものはない。題名通り“高雅で感傷的なワルツ”の媚薬にいかれてしまった感じ。
    H28('16)3.10
 
      私のCD
  シベリウス交響曲第2番
ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調 作品131
          ラサール弦楽四重奏団
ベートーヴェンが死の8ケ月前に完成したもので第9交響曲の後、3年の1826年7月の作品。珍しく7つの楽章からなり、ワーグナーが「音をもって表現しうる最も悲痛なもの」と評した第1楽章の愛らしき曲調、第3第4に進んで6つの変奏に示された幻想的な内容、第6の青春を回想する悲痛な曲趣、そして最後に曲は迷いの夢から醒めたもののように敢然と雄々しく闘いを展開する感じ。27.11.10コメント参照
27.11.10 試聴済み 今回と同じ盤

シベリウス 交響曲第2番変二長調 作品43
        音楽劇「クオレマ」 作品44から「鶴のいる情景」
        サイモン・ラトル指揮 バーミンガム市交響楽団
交響曲第2番
シベリウスの田園交響曲と言われているこの曲は、フィンランドの民謡や舞曲を多く取り入れている。北欧情緒たっぷりの第2楽章は心地良い。最終章の第4楽章は、有名なフィンランディアに示したシベリウスの祖国愛を大きく歌い上げ躍動感に満ちている。 27.7.23コメント参照。
27.7.23 試聴済み プレヴィン指揮 ピッツバーグ交響楽団
私のCD・・サラステ指揮 フィンランド交響楽団

音楽劇「クオレマ」
初登場曲。手元に資料が無くWikipediaでチェックした結果を記す。「クオレマ」はフィンランド語で「死」を意味し、1903年に初演された戯曲。この上演に向け付随音楽として6曲作曲している。その後、上演を重ねるうちに1906年には第3曲と第4曲を結合し「鶴のいる情景」として改訂している。今日は午前中の病院行と帰途写真展へ立ち寄り、午後のこのレコードコンサートはその疲れからかウトウトしてしまい、初めて耳にした「クオレマ」は殆ど記憶に残っていない。そのためNetのYou tubeで確認しようと検索したが、マイナーな曲のため見当たらなかった。次回試聴会での登場を待つのみだ。
     H28('16)3.17
 
       私のCD
 ベートーヴェン交響曲第8番
ベートーヴェン 交響曲第8番ヘ長調 作品93
          オトマール・スゥイトナー指揮
          シュターツカペレ・ベルリン
今回4回目の試聴会となり、その都度コメントしているから今回はパス。ただし、私が持っているベートーヴェンのイメージから大きく離れた曲なのだ。とに角、明るい。「英雄」とか「運命」のような勇壮且つ情熱的なものではなく、上機嫌なベートーヴェンの顔が見える。フィナーレの盛り上げは曲趣に反し猛烈でこれでもか、これでもか・・・と繰り返され彼の執念が滲んでいる。
26.7.31 試聴済み アバド指揮 ウィーン・フィル
27.4.30   〃    今回と同じ盤
27.12.10  〃        〃
私のCD・・プロムシュテット指揮 シュターツカペレ・ドレスデン

ブルックナー 交響曲第5番変ロ長調
         セルジウ・チェリビダッケ指揮
         ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
         1986年10月22日サントリーホールライブ収録 
過去の試聴会で交響曲第4、6、7、8番を聴いているが、本日の第5番は初めての登場。ブルックナーは後期ロマン派の特にドイツ精神に徹した代表的作曲家として、マーラーとともに超有名。ベートーヴェンの構想を骨格とし、シューベルトの旋律とワーグナーの和声を血肉として完成されたのがブルックナーの音楽と言われている。彼は9曲の交響曲(習作期のヘ短調と第0番を入れると11曲)を作っているが、第4番「ロマンティック」とか第7番が親しみ深く、本日の第5番は聴く機会が少なく、比較的馴染が薄い。この曲も長大な作品で約90分近く要した。他の作品も長時間の大作が多くその辺りも一般に馴染みにくい一因かも知れない。他の曲にも共通するが、ロマン派のベートーヴェン、モーツァルトのように定型的なものでなく、舞踊曲のように旋律の変化も多くジックリ聴いていると、大きな流れの中に身を委ねているような瞑想状態になるから不思議な魅力がある。この第5番は持っていないが、次の曲は持っている。
私のLP・・交響曲第7番 ショルティ指揮 ウィーン・フィル
   CD・・交響曲第3番 朝比奈隆指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
   CD・・交響曲第4番「ロマンティック」 
シノーボリ指揮 シュターツカペレ・ドレスデン
   CD・・交響曲第8番、第9番 ヴァント指揮 北ドイツ放送管弦楽団 
     H28('16)3.24
 
       私のCD
   ベートーヴェン序曲集
  レオノーレ序曲第3番72a
  
ベートーヴェン 序曲「レオノーレ」第3番 作品72a
          ハンス・シュミット・イッセルシュテット指揮
          ウィーン・フィル
27.2.10 試聴済み 本日の盤に同じ
27.6.25   〃    ベーム指揮 ウィーン・フィル
上記試聴日にコメント済みにつき今回は記載せず。
私のCD・・ベートーヴェン序曲集 カラヤン指揮 ベルリン・フィル

ブルックナー 交響曲第8番ハ短調
         セルジウ・チェリビダッケ指揮  ミュンヘン・フィル
         1990年10月20日 サントリーホール ライブ録音
27.8.27、28.1.21 試聴済み ケンペ指揮 チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
上記試聴日にコメント済みにつき今回は記載せず。
私のCD・・ギュンター・ヴァント指揮 北ドイツ放送管弦楽団(ハース版)
     H28('16)3.29
 
       私のCD
  ブルックナー 交響曲第3番
メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲ホ短調 作品64
ブルッフ        ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調 作品26
             Vn.シュロモ・ミンツ アバド指揮 シカゴ交響楽団
メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲
超有名曲で、出足のメロディで即座に頷ける名曲だ。俗に言われるヴァイオリンの四大協奏曲ベートヴェン、ブラームス、チャイコフスキーも素晴らしいが、美しいメロディが総ての楽章にちりばめられているメンデルスゾーンのこの曲は絶品だ。開始後すぐにソロ・ヴァイオリンがメロディを奏で、曲中のソリストの見せ場カデンツアの場面も、当時の「協奏曲のセオリー」からすると、とても新鮮で以降の作曲家にも影響を与えたと言われている。久しぶりにこの名曲を聴き昔を思い出した。昭和30年代「労音」(労働者音楽協会?)があり入会していた。金額は記憶にないが比較的少額で多くの音楽愛好家が加入し、毎月1回コンサートが聴けた。当時は大阪に居り、梅田の産経会館、中之島のフェスティヴァルホール、大阪城近くの大手門会館などに行った記憶が残っている。最近しばしば聴いているブルックナーとかマーラーに比べメンデルスゾーンは曲調が非常に安定しており、懐かしさ一杯だった。
27.8.4 試聴済み Vn.ハイフェッツ ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団
私のLP・・Vn.フランチェスカッティ ジョージ・セル指揮 コロンビア交響楽団
   LP・・Vn.カブリロフ ジョセフォ・ヴィッツ指揮 ハンブルグ放送管弦楽団

ブルッフ ヴァイオリン協奏曲
この試聴会初登場。ヴァイオリン協奏曲でコンサートなどで演奏されるのは前述の四大ヴァイオリン協奏曲が圧倒的に多いが、それに次いでこのブルッフもしばしば演奏される。彼は生涯で3つのヴァイオリン協奏曲を書いているが、その中でも最も有名なのがこの第1番だ。曲はいかにもドイツロマン派の流れに沿ったロマンティシズムの濃厚に表れたもので、全体に甘く美しい旋律が満ち溢れている。私のCDはブラームスのヴァイオリン協奏曲とこのブルッフの曲が収録されており、自宅でも聴くことが多い。

ブルックナー 交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」(ノヴァーク版))
         カール・ベーム指揮 ウィーン・フィル
今回初登場。ブルックナーは次の曲を過去9回聴いている。
交響曲第4番「ロマンティック」、第8番各3回、第5番、第6番、第7番各1回。これらの中でブルックナーは、「第8番は私が書いた曲の中で最も美しい音楽」と言っている。確かに第3楽章のアダージョは美しい。H27.10.20交響曲第4番「ロマンティック」を聴いたと時に書いているが、彼の交響曲はヴァイオリンのトレモロでささやくような表現が多用されており、俗に「原始霧」と呼ばれている。その深い霧の中から何かが次第に姿を現すような特長を持っている。本日の第3番にもそのような場面があり、彼の交響曲に共通のものなのだ。聴き始めのころには、その悠長さに些か退屈しが、10回目の今日になると曲想の展開にいろいろと想像を巡らし、次第に期待感が高まってゆくから不思議なものだ。一般的に交響曲の第4番、第8番が親しみ易いと言われているが、本日の第3番も大いに気に入った。標題の「ワーグナー」のいきさつは次の通り。1873年8月、ブルックナーはこの第3番と第2番の楽譜を持ってバイロイトのワーグナー宅を訪問、風采の上がらないブルックナーを見てワーグナー夫人は物乞いと勘違いしたという。ワーグナー自身も殆ど献呈に興味を示さず門前払いの形で帰らせたが、後で楽譜を見て感動し、ブルックナーを連れ戻して抱きしめ「私はベートーヴェンに到達する者をただ一人知っている。ブルックナー、君だよ」と称賛し献呈を受け入れたとの事。
私のCD・・朝比奈隆指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
     H28('16)3.31
 
      私のCD
    メンデルスゾーン
   交響曲第4番「イタリア」
ベートーヴェン 交響曲第4番変ロ長調 作品60
           オトマール・スゥイトナー指揮 
                       
   ベルリン・シュターツカペレ
明日から4月のためか、本日は珍しく交響曲第4番の競演となった。ベートーヴェンのこの交響曲第4番について、シューマンは「二人の巨人に挟まれたギリシァの乙女」と表現している。男声的で力強い第3番「英雄」と第5番「運命」の間にある幸福感に満ちたロマン的色彩の濃い曲だからこのように評したのだろう。以下次の試聴日にコメント済みのため、今回は省略。
26.8.5 試聴済み クライバー指揮 バイエルン国立管弦楽団
26.10.23  〃    スクロヴァチェフスキー指揮 読売日本交響楽団
27.3.17   〃   小沢征爾指揮 水戸室内管弦楽団
27.4.16   〃   本日と同じ盤
27.7.2   〃   ベーム指揮 ウィーン・フィル
27.12.15  〃    スクロヴァチェフスキー指揮 読売日本交響楽団
28.1.14   〃
   カラヤン指揮 ベルリン・フィル
私のCD・・カラヤン指揮 ベルリン・フィル

シューマン     交響曲第4番ニ短調 作品120
メンデルスゾーン 交響曲第4番イ長調 作品90「イタリア」
            クラウス・テンシュテット指揮 ベルリン・フィル
シューマン
彼の生涯4つの交響曲の中で、この第4番は一番の傑作と言われている。この交響曲は楽章を区切らず一つの楽章として連続して演奏される。私は多くの交響曲で第2楽章がお気に入りの場合が多いが、このシューマンの場合も第2楽章「ロマンツェ」の第一オーボエとチェロによる哀調の込められた主題、それに独奏ヴァイオリンが加わり実に美しい楽章となっており、お気に入りの一つである。
27.10.22 試聴済み 本日と同じ盤
28.1.21    〃    クーベリック指揮 バイエルン放送管弦楽団
私のCD・・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィル

メンデルスゾーン
標題の「イタリア」の通り、南欧イタリアの明るい雰囲気に満ちた曲だ。何回聴いてもウキウキする。特にイタリアを感じさせるのは第1楽章と第4楽章。イタリアのあの紺碧の海や抜けるような青空を想像させる。晴朗な気分に浸れるのだ。それにも増して、この曲でも前出のシューマン同様、第2楽章が素晴らしい。哀愁を帯びた旋律がこのバラード風の楽章を完全に支配し、満足感一杯だ。
27.9.29 試聴済み シノボリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
27.10.22   〃   本日の盤に同じ
私のCD・・バースタイン指揮 ニューヨーク・フィル 
     H28('16)4.19
 
    私のLPジャケット
      シューベルト
   交響曲第8番「未完成」
ウェーバー   歌劇「オイリアンテ」序曲
ブラームス    ハイドンの主題による変奏曲 作品56a
シューベルト    交響曲第8番ロ短調「未完成」
ベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調 作品67「運命」   
          フルトヴェングラー指揮 ベルリン・フィル
          1954年5月4日パリオペラ座での演奏会録音(モノラル)
ウェーバー 歌劇「オイリアンテ」序曲
この試聴会に初登場。ウェーバーと言えば何と言っても歌劇「魔弾の射手」が超有名だ。彼はドイツ国民オペラの確立者と呼ばれているが、この「魔弾の射手」の大成功によるところが大きい。当時はオペラと言えば、イタリア・オペラが支配的な時代だったのだ。本日聴いた歌劇「オイリアンテ」序曲は、1823年10月三幕物として創作されたが、筋が面白くなくあまり歓迎されなかったらしい。しかし序曲は好評を博しウェーバーの傑作に数えられている。明るく弾むような序奏部に始まり、抒情的な第2主題がアリア風にそしてラルゴー、ゆっくりと豊かに奏でられる。これから展開する物語を十分にイメージさす曲調だった。

ブラームス ハイドンの主題による変奏曲
この曲も初登場。ものの本によれば、ブラームスは絶えず大先輩のベートーヴェンを意識し、負けない作品を創りたいと考えていたらしい。そのため、23歳の時第一番の交響曲を書こうと思い立ってから実際に完成するまでに20年もの歳月を要している。本日聴いた曲は40歳の時(1873年)の完成で、長年温めてきた交響曲第1番の筆慣らし的な意味で書かれたものとなっている。ベートーヴェンも多くの変奏曲を残しているが、ブラームスも変奏曲の名人と言われるだけあってすぐれた作品を多く創っている。その優れた作品の一つが本日のこの曲。

シューベルト 交響曲第8番「未完成」
これまで4回試聴済みでその都度記載のため今回は省略。
26.10.9 試聴済み ベーム指揮 ウィーン・フィル
27.9.3    〃   ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィル
27.9.29    〃   シノボリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
27.10.30   〃   テンシュテット指揮 ロンドン・フィル
私のLP・・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィル
   LP・・バンベルガー指揮 パドル―管弦楽団
    CD・・ギブソン指揮 ロンドン交響楽団

ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」
過去11回試聴済み。五味さんもベートーヴェンが大好きだったらしく、特にこの「運命」は毎回演奏する楽団と指揮者が異なっている。それらの違いは私には十分には分からないが、本日のフルトヴェングラーとベルリン・フィルの組み合わせは最高のもので、それだけで圧倒されてしまう感じ。久しぶりのモノラルは音質がきわめて硬質で、緊張感を持って聴いた。
26.8.7  試聴済み マゼール指揮 クリーヴランド管弦楽団
26.8.11   〃    フルトヴェングラ指揮 ベルリン・フィル
26.9.4    〃
   小沢征爾指揮 ボストン交響楽団
26.10.23   〃    スクロヴァチェフスキー指揮 読売日本交響楽団
26.12.2   〃    フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィル
27.4.21   〃    スイートナー指揮 シュターツカペレ・ベルリン
27.5.21   〃    スクロヴァチェフスキー指揮 NHK交響楽団
27.6.16   〃    リスト編曲 Pf.グレン・グールド
27.7.14   〃    小沢征爾指揮 ボストン交響楽団
27.8.20   〃    バーンスタイン指揮 バイエルン放送交響楽団
27.12.15   〃    スクロヴァチェフスキー指揮 読売日本交響楽団
私のLp・・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィル
   LP・・ジョセフォヴィッツ指揮 ハンブルグ交響楽団
    CD・・リスト編曲 Pf.グレン・グールド  
  
     H28('16)4.26
 
    私のLPジャケット
       バッハ 
   ゴールドベルク変奏曲

    Pf.グレン・グールド
 
チャイコフスキー 弦楽セレナードハ長調 作品48
ドヴォルザーク  弦楽セレナードホ長調 作品22
           ネヴィル・マリナー指揮 アカデミー室内管弦楽団
両曲ともこの試聴会初登場。セレナードは小夜曲とも呼ばれており、思いを寄せる女性の家の窓辺で奏する恋のイメージが強い。モーツァルトの時代に流行した小交響曲的な器楽曲。貴族社会から市民社会へ移り変わる時代の変化と共にその内容も大きく変化して行く。モーツァルトの時代、貴族の館の祝い事やパーティなどの機会に娯楽目的のために作曲された音楽は19世紀ロマン主義の時代になると作曲家の芸術表現を盛り込むものとなった。ロマン派のセレナードとしては、ブラームスやドヴォルザークのものも有名だが、一番ポピュラーな曲がチャイコフスキーの「弦楽セレナード」らしい。個人的にはドヴォルザークの曲の方が好きだ。民謡風のメロディーと幼いころ母に抱かれているような安心感と安らぎを覚える曲だった。

J.S.バッハ ゴールドベルク変奏曲 BWV.988 
        Pf.グレン・グールド
試聴会初登場。この曲は、1741年(56才)の時にバッハが当時世話になっていたカイザーリンク伯爵の不眠症を慰めるために書かれたもので、この曲のことを特に「ゴールドベルク変奏曲」と呼んでいるのは、カイザーリンク伯爵がお抱えのチェンバロ(クラヴィーア)奏者ゴールドベルクにたびたび演奏させて楽しんだ事に由来している。彼はバッハの弟子の一人でチェンバロの名手であったという。演奏には60分近く要するから、ゴールドベルクの腕前は相当のものだったらしい。バッハ自身がつけた正式な名称は「アリアと種々の変奏」。本日聴いたLPは、グールドが22歳の時この曲でデビューし、死の1年前に再録音している。彼のバッハ演奏の集大成とでも言うべき演奏で、考え抜かれた表現となっている。1950年代の末にこのレコードが登場したとき、日本では非バッハ的、ジャズ的、奇をてらっているなど余り好意的でなかった。だが時を経ずして、現代の独創的で新鮮な霊感に満ちた、などの言葉が、この演奏とグールドに対する賛辞として述べられ、それは現在に続いている。グールドについては、H26.8.14及びH27.
6.16に記しているが、最近読んだ本から一部抜粋、次の通り記録しておきたい。
[孤高のピアニスト、グールドが50歳で没してから20年以上の歳月が流れた。しかし、未だに彼を超えるほどの革新的な演奏は表れていない。32歳で公開演奏を引退し、録音室だけで演奏を続けたピアニストは果たしてピアニストと呼んでも良いのだろうか。そんな疑問はさておいても、私たちの前には20世紀を通じて最も衝撃を与えた「レコード」が残されている。]
私のLP・・Pf.グレン・グールド  ※デビューレコード
     H28('16)5.10
 
       私のCD
  ブラームス 交響曲第1番
ブラームス 交響曲第1番ハ短調 作品68
        クラウス・テンシュテット指揮 ロンドン・フィル
ブラームスは作曲に関して大変慎重だった。この第1番も作曲を始めてから、完成するまで実に21年を費やしている。このようにブラームスが慎重に取り組んだのは、彼の性格にもよるが、偉大な先輩ベートーヴェンを常に意識し交響曲を書くなら、ベートーヴェンの作品をしのぐものにしたい、と考えていたからである。ブラームス自身「交響曲と言うのは冗談事で書けるものではない・・・」、さらに「背後にベートーヴェンの足音を聞きながら・・・」と言っている。この曲はそうした苦しみの中で推敲に推敲を重ねたものだけに、その仕上がりは素晴らしい。この曲を聴いた名指揮者ハンス・フォン・ビューローは「ベートーヴェンの『第9番』に続くべき『第10番』だ、と言って絶賛したという。本日3回目の試聴となったが最終章の盛り上げは実に雄大・荘厳で、ベートーヴェンを上回る感すらした。
H26.5.27記載済み、参照の事。
26.5.27 試聴済み フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィル
27.6.25   〃    ベーム指揮 ウィーン・フィル
私のLP・・バンベルガー指揮 フランクフルト・オペラ座管弦楽団
   CD・・カラヤン指揮 ウィーン・フィル

ラヴェル ボレロ  
      スペイン狂詩曲、
      亡き王女のためのパヴァーヌ 
      「ダフニスとクロエ」第2組曲
      シャルル・ミンシュ指揮 パリ管弦楽団
次の試聴時に記載済みにつき今回は省略。
27.8.11 試聴済み 今回の盤に同じ
ボレロ 27.11.12 試聴済み カラヤン指揮 ベルリン・フィル
私のLP・・ラヴェル名演奏集 Pf.フランソワ
   CD・・ボレロ、スペイン狂詩曲 マゼール指揮 フランス国立管弦楽団
    H28('16)5.19
 
       私のCD
      ベートーヴェン
    ヴァイオリン協奏曲
ストラヴィンスキー 協奏二重奏曲
             Pf.ロイ・ボーガス Vn.ヨーゼフ・シゲティ
プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 作品19
          Vn.ヨーゼフ・シゲティ
          ヘルベルト・メンゲス指揮 ロンドン交響楽団
ストラヴィンスキー 協奏二重奏曲
この試聴会初登場。ストラヴィンスキーは、88歳の生涯の間たえず作風を変え作品ごとにスタイルを更新し続けた。そのため、彼はしばしば「カメレオンのような作曲家」と言われた。それは彼の音楽に対するあくなき探究心と生活環境によるものだろう。パリで活動していた1917年ロシアで起こった10月革命は、彼を祖国から切り離しその後約30年をフランスとスイス、残り30年をアメリカで過ごしニューヨークで没している。本日聴いたこの曲は手許には何の資料も無く、Wikipediaにも記載なし。web検索の結果You Tubeに収録されたものが一つだけあった。それによれば、この曲は5つの部分からなっている。「カンティアナ」、「牧歌1」、「牧歌2」、「ジーク」、「バッカス讃歌」。改めて聴き直してみると不思議な雰囲気を持った音楽だった。エコーのかかったピアノにヴァイオリンの音が短く刻まれ、何か不安を掻き立てるようなそして浮遊感漂うものだった。やがてアップテンポとなりヴァイオリンとピアノが歯切れよく飛び跳ね不安は一掃される。続いてアダージョ風のゆったりとした旋律に変わり心が休まる。次の段ではポルカ風の明るいテンポとなり活力が漲る感じ。ヴァイオリンのすすり泣くような音色で静かに幕を閉じた。「カメレオン」に相応しい感情の起伏に富んだ印象に残る音楽だった。余談だか、彼は1959年4月来日、N響の指揮をとり東京、大阪で公演している。日本を代表する作曲家・武満徹の「弦楽のためのレクイエム」を聴き絶賛した。直前まで日本の某評論家は「音楽以前の作品」と酷評していたが、これを機に国内外で評価は上昇の一途を辿ったとの事。

プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲
この曲も初登場。彼は2つのヴァイオリン協奏曲を書いているがこれがまるで対照的なのだ。それは1933年に亡命生活に終止符をうち祖国に復帰した後、作風を大きく転換させたためである。1917年(26歳)に作られたこの曲は、前衛的な作風を多く書いていた頃の彼らしく、ロマンティシズムと野性的なものがミックスされた象徴的な作品となっている。多くのヴァイオリン協奏曲の中では最も短い(約21分)曲だが、鋭く躍動するリズムと変幻する樂趣は素晴らしい。他の協奏曲にはない個性的な曲だ。第2楽章のリズムなどはまるで阿波踊りのイメージだった。また第1楽章に出てくる夢見るようなモチーフが全曲を通して流れている。

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61
          Vn.キドン・クレメル
          ネヴィル・マリナー指揮 アカデミー室内管弦楽団
古今のヴァイオリン協奏曲の中でも最高峰と仰がれているこの曲は、驚くことに初演の後長い間陽の目を見る事がなかった。1806年(36歳)この曲の初演の時、楽譜が上演まぎわまで完成しなかったため、オーケストラは総練習する時間がなく、名ヴァイオリニストのフランツ・クレメントも初見同様で演奏するありさまで、初演の評は芳しくなく1844年不出世の名ヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムがメンデルスゾーンの指揮で演奏するまで何と40年近く眠っていたのだが、この演奏を機に世の絶賛を浴びるようになった。曲は「交響曲第5番」や「第6番」を書く直前の絶頂期の時代に書かれただけあって男性的で情熱的な逞しさに溢れ、あくまでも前進する激しい気迫が感じられる。第1楽章終盤のカデンツァは印象に残る。聴き終えてさすがにベートーヴェンだ、との充実感に満たされた。
27.9.8 試聴済み Vn.メニューイン 
フルトヴェングラー指揮 フィルハーモニア・オーケストラ
私のCD・・Vn.アンネ・ゾフィー・ムター クルト・マズア指揮 ニューヨーク・フィル 
     H28('16)5.24
 
       私のCD
       モーツァルト
   交響曲第35番「ハフナー」
モーツァルト 交響曲第35番ニ長調 K.385「ハフナー」
マーラー    交響曲第5番嬰ハ短調
         クラウス・テンシュテット指揮 ロンドン・フィル
         1984年4月13日 大阪フェスティバルホール、ライブ
モーツァルト交響曲第35番 「ハフナー」
試聴会初登場。モーツァルトが20歳のとき(1776年)ザルツブルクの名門ハフナー家の依頼で、令嬢エリザベートの結婚祝いの宴席のための、いわゆる「ハフナー・セレナード」として有名な「セレナード第7番」を作った。(この曲はH27.12.10試聴済み)それから6年後、父レオポルトを介してハフナー家から新しいセレナードの作曲を依頼された。それはハフナー家の当主ジークムントが貴族に列せられた祝宴の席で演奏するためのものであった。ところがモーツァルトはその当時多忙を極めており、1楽章ずつ出来上がる都度父親のもとに送った。そんな次第で出来栄えを確かめることもなく、作品を渡してしまったのであるが、後に戻ってきた草稿を見て意外と良く出来上がっており、満足した彼はその中から2曲を削りそのまま交響曲として発表した。それがこの曲だったのだ。元来祝典用に書かれた音楽だけあって明るく華麗な美しさに溢れた曲となっている。
私のCD・・指揮、チェンバロ トレヴァー・ピノック 
イングリッシュ・コンサート(演奏)

マーラー交響曲第5番
これまでに5回試聴済み。その都度コメントしているので今回は省略。
26.7.8 試聴済み インバル指揮 東京都交響楽団
26.11.13、27.7.7、28.1.5 試聴済み 本日と同じ盤
28.2.9 試聴済み バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィル
私のCD・・小沢征爾指揮 ボストン交響楽団
    H28('16)5.31
 
    私のLPジャケット

      R.コルサコフ
  交響組曲「シェエラザード」
R.コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」 作品35
         カラヤン指揮 ベルリン・フィル
27.3.10 試聴済み 本日の盤に同じ
28.2.2   〃    アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団
この曲は6世紀以前からペルシャに伝わる説話小説「千一夜物語」をもとに作られた曲。自分の妃が不貞を働いたため、女性に不信感を持ったサルタン(王)シャリアールは新しい妃をめとって初夜を過ごすと翌朝には殺してしまった。その後の女性シェエラザードは自ら進み出て、千と一夜、奇想天外な話でサルタンを飽きさせず、ついに王は彼女を殺さず王妃にした、というものだ。この物語「アラビアンナイト」(千一夜物語)には「アリババと40人の盗賊」などスリルに満ちた面白い物語が多く、私も小学生時代夜になると布団の中に入って読み浸った記憶がある。R.コルサコフはこの物語からいくつかの話を取って4楽章の“音画”として描いた。第1楽章「海とシンドバットの船」、第2楽章「カレンダー王子の物語」、第3楽章「若い王子と王女の物語」、第4楽章「バクダットの祭り、海、難破、終曲」からなっている。“近代オーケストレーションの大御所”と言われた彼の多彩な管弦楽法と特色が現れており、特に全楽章に繰り返し現れるヴァイオリンの美しい主旋律は素晴らしく心に残る。また、管弦楽器の迫力に満ちた大音響も臨場感タップリだ。前述の試聴記も参照のこと。

私のLP・・本日の盤に同じ

シューマン クライスレリアーナ 作品16
        子供の情景 作品15
        Pf.アルフレッド・ブレンデル
27.2.10 試聴済み 本日の盤に同じ
クライスレリアーナ
8曲で構成されたピアノ曲。1838年4月復活祭の前に完成され、シューマンの恋人クララに献呈されている。当時、思いを遂げられぬ恋に悩んでいたシューマンが、日頃愛読するホフマンの小説「クライスレリアーナ」の主人公に自分の姿を見いだし、題名と内容を思いのままに幻想的な一曲としたのである。精緻な技巧と詩的な表現を必要とするピアノ曲で内容のある曲だ。

子供の情景
27.2.10 試聴済み 本日の盤に同じ
13の小曲からなる有名なピアノ曲。シューマンの童心を盛った傑作曲集で素朴なロマンティックで気品がある美しい感情のこもった作品。このうち「トロイメライ」が最も有名。私も子供の頃から耳にしたメロディだ。曲の構成は次の通り。これらの題名を見てもいろいろと想像が膨らみ楽しいものだ。
1.不思議な国、2.珍しいお話し、3.かくれんぼ、4.駄々っ子、5.満足、6.重大事件、7.夢想(トロイメライ)、8.炉ばた、9.木馬の騎士、10.むきになって、11.びっくりさす、12.眠れる子ども、13.詩人は語る
私のCD・・子供の情景
(トロイメライほかピアノ小品集) Pf.ピーター・デゲンハート
     H28('16).6.7
 
    私のLPジャケット
    チャイコフスキー
   交響曲第6番「悲愴」
チャイコフスキー 交響曲第6番ロ短調 作品74「悲愴」
           クルト・ザンデルリンク指揮 ベルリン・フィル
26.6.3  試聴済み アバド指揮 ウィーン・フィル
27.10.22
   〃   ビシュコフ指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
27.10.29
    〃  マゼール指揮 クリーヴランド管弦楽団
私のLP・・ミンシュ指揮 パリ音楽院管弦楽団
   CD・・レーバー指揮 モスクワ交響楽団
   CD・・本日の盤に同じ
チャイコフスキーは多くの傑作を残しているが、その中で番号つきの交響曲は6曲ある。その最後の3曲である第4番、第5番、第6番「悲愴」は、ある音楽家が“音楽の巨人たち”と呼んだように、今日のオーケストラ・コンサートでも最もよく演奏されるレパートリの一つだ。本日聴いた最後の交響曲第6番が完成する3年前の1890年9月、チャイコフスキーに衝撃的な事件が起きた。それは、彼の最大の援助者であったフォン・メック夫人が破産したために援助は打ち切りとなり、しかも夫人との文通さえも拒否され彼は絶望した。さらに、最愛の妹アレクサンドラの死去が襲った。彼女はチャイコフスキーが親しく話せる唯一の女性でもあっただけにその悲嘆は大きかった。彼はこれを機にアメリカへ旅行に出かけ多くの人々の歓迎を受けたが、心の癒えることはなかった。この曲が書かれたのは1893年のロンドン旅行の後であるが「旅行中なんども泣いた」と記している。さらに「この交響曲は今までの自分の作品の中でも最も優れたものとなるであろう」と友人あてに書いている。曲は1893年8月に完成、10月28日彼自身の指揮によりペテルブルグで初演され、絶対的な自信を持っていたがその内容があまりにも厭世的なためか聴衆も評論家にも受けなかったらしい。その後この交響曲に「悲愴」という副題を与えたが、その直後の1893年11月6日チャイコフスキーは死去してしまった。死後ほどなく再演されその時初めて聴衆はこの曲の真価を認めたのである。

ヘートーヴェン 交響曲第6番ヘ長調 作品68「田園」
          オトマール・スゥイトナー指揮
          ベルリン・シュターツカペレ
26.12.2 試聴済み フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィル
28.1.14    〃   プロムシュテット指揮 ドレスデン・シュターツカペレ
28.1.14    〃    リスト編曲 Pf.シブリアン・カツァリス
私のLP・・ワルター指揮 コロンビア交響楽団
上記の各試聴時にコメント済みにつき今回は省略。 
    H28('16)6.28
 
      私のCD
   グリーグ、シューマン
     ピアノ協奏曲
グリーグ   ピアノ協奏曲イ短調 作品16
シューマン ピアノ協奏曲イ短調 作品54
        Pf.ゲザ・アンダ 
        ラファエル・クーベリック指揮 ベルリン・フィル
グリーグ 作品16
27.3.10 試聴済み 本日の盤に同じ
27.5.26   〃    Pf.ツィマーマン カラヤン指揮 ベルリン・フィル
27.10.29  〃     Pf.リヒテル マタチッチ指揮 モンテ・カロル国立管弦楽団
28.2.9    〃     上記5.26と同じ盤
私のCD・・Pf.クラウディオ・アラウ ディヴィス指揮 ボストン交響楽団
   CD・・Pf.上記5.26同じ盤
上記の試聴時にコメント済みにつき今回は省略。

シューマン 作品54
27.3.10 試聴済み 本日の盤に同じ
27.5.26    〃   Pf.ツィマーマン カラヤン指揮 ベルリン・フィル
27.10.29    〃   Pf.リヒテル マタチッチ指揮 
モンテ・カルロ国立歌劇場管弦楽団
私のLP・・Pf.リリークラウス デザルッアンス指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団
上記の試聴時にコメント済みつき今回は省略。

プロコフィエフ     「古典」交響曲第1番二長調 作品25
ショスターコーヴィチ 交響曲第1番ヘ短調 作品10
           エフレム・クルツ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
プロコフィエフ「古典」 作品25
試聴会初登場。プロコフィエフと言えば、バレー音楽「ロメオとジュリエット」が有名で他の音楽はあまり聴いていない。もちろんこの交響曲第1番「古典」は初めて聴いた。手元の資料によると、彼は7つの交響曲を書いているが、その内最も親しまれているのがこの「古典」という副題を持つ第1番らしい。この曲は1917年(26歳)の作曲で、それまで「ピアノ協奏曲第2番」など大胆なハーモニーやリズムを駆使した前衛的な作品を書いていたが、急に作風を変え古典形式にのっとった分かりやすいこの曲を作り、世間を驚かせた。交響曲と言っても演奏時間は僅か15分ほどの短い曲だがなかなかに引き締まっており、全体に生気に溢れた音楽になっている。彼は学生時代にハイドンの交響曲を研究しているが、それがこの曲に生かされている感じ。つまり、形式は古典的スタイルに沿っているが音の使い方や感覚は紛れもなく現代の音楽で、そこがこの音楽の面白さとなっている。古典と現代をミックスした曲なのだ。

ショスターコーヴィチ 作品10
この曲も試聴会初登場。彼が19歳の時の作品。1926年5月12日レニングラードで初演されている。この処女作の公演は、彼の名をロシア国内に広く知らしめたばかりでなく、アメリカを初めヨーロッパ各国に宣伝された。この曲の正確な名は「管弦楽のための交響曲・作品10番」となっており、総譜には現代の大管弦楽団とピアノの参加を要求している。伝統的な4つの楽章からなり、ベートーヴェンの形態を守ったものでロシアの諸楽聖の影響を多分に受けている。この曲は後刻、非常にブルジョア的内容を持ったものである、として反対されたことがあったが、今日では世界中で演奏されている。彼の交響曲の中では第5番「革命」が有名でよく聴いているが、副題の「革命」は現在ではあまり付けられない。
    H28('16)6.30

       私のCD
 フォーレヴァイオリン・ソナタ
      第1番、第2番
シベリウス ヴァイオリン協奏曲ニ短調 作品47
ブルッフ   ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調 作品26
        Vn.ジノ・フランチェスカッティ
        レナード・バーンスタイン指揮(シベリウス)
        トーマス・シッパース(ブルッフ) ニューヨーク・フィル
シベリウス
27.6.2 試聴済み Vn.キョン・ファ ブレヴィン指揮 ロンドン交響楽団
27.9.17   〃    Vn.ハイフェッツ ヘルドン指揮 シカゴ交響楽団
私のCD・・Vn.五嶋みどり ズービン・メータ指揮 イスラエル・フィル
上記試聴時にコメント済みにつき今回省略。

ブルッフ
この試聴会2回目の登場。ヴァイオリン協奏曲でコンサートなどでよく演奏されるのはベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキー、メンデルスゾーンのいわゆる4大ヴァイオリン協奏曲が多く、それに次いでこのブルッフが演奏されている。彼は生涯で3つのヴァイオリン協奏曲を残しているが、その中でも最も有名なのがこの1番だ。私の持っているCDにはブラームスとこのブルッフが収録されており、自宅でも聴く機会が多い。聴いていると、メンデルスゾーンと同じようにメランコリックで甘美な旋律を持ち馴染みやすい。3つの楽章からなるが第1楽章と第2楽章は続けて演奏されている。
28.3.29 試聴済み Vn.シュロモ・ミンツ アバド指揮 シカゴ交響楽団
私のCD・・Vn.サレルノ・ソネンバーグ エド・デ・ワールト指揮 ミソネタ管弦楽団

フォーレ ヴァイオリン・ソナタ第1番イ長調 作品13
      ヴァイオリン・ソナタ第2番ホ短調 作品108
      子守唄 作品16
      Vn.ジャン・ジャック・カントロフ Pf.アラン・ブラーネス
近代フランス音楽の父として崇められているだけあって、洗練された優雅な雰囲気を持った曲だ。彼が生涯を終えてから80年以上も経ったのに作品の瑞瑞しさと新鮮さは今も変わらない。指導者としても優れており、門下からはラヴェル、フロラン・シュミット、ケクランなど俊秀を輩出している。心に沁みるメロディに浸り今日の蒸し暑い梅雨の空気も爽やかな秋空の心地になった。音楽は本当に人の気持ちを豊かにする・・実感の半日だった。
私のCD・・Vn.小林美恵 Pf.アラン・ロジェ
 
     H28('16)7.5
 
     私のLPジャケット
本日試聴の盤と同じ指揮者、
     樂団による「四季」
「調和の幻想」保有せずこの盤を掲載
ヴィヴァルディ 協奏曲集「調和の幻想」 作品3  第1番~第12番
          クリストファー・ホグウッド指揮
          アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック
この試聴会は作家「五味康祐」の遺贈LPを中心に行われているが、ヴィヴァルディはH26.6.19に「ヴィオラ・ダモーレ」を1回聴いているだけで僅かに2回目の登場。五味さんはヴィヴァルディにあまり関心を持っていなかったのかも知れない。ヴィヴァルディと言えば何と言っても協奏曲「四季」が有名で、それ以外の曲を聴く機会はあまり多くない。彼は生涯に650曲の作品を残しているが、その内450曲余りが各種の独奏楽器のための協奏曲、彼自身がヴァイオリンの名手だっただけに弦楽器の為に書かれた協奏曲がその主流となっているが将に「協奏曲の王」と呼ばれるのに相応しい数なのだ。このおびただしい作品を評してイタリアの作曲家ダラピッコラは「ヴィヴァルディは600の作品を書いたのではなく一つの作品を600回書き換えたのだ」と言っている。本日聴いた「調和の幻想」(調和の霊感という訳もある)はその内容の豊かさ、多彩さ、新鮮さで「四季」に勝るとも劣らない作品だと思う。短い旋律が続きとにかく明るく親しみやすい曲で、モーツァルトのイメージに繋がる。若き日のバッハが、ヴィヴァルディの作品を熱心に研究したことは有名だ。年代的にはバッハやヘンデルとほぼ同時代に活躍しているが、特にバロックの協奏曲の分野では第一人者だろう。
第1番から第12番の楽器の編成は次の通り。それぞれ異なった独奏楽器に管楽器が合奏の形式をとる面白い作品だ。
1.ニ長調 ヴァイオリン4と管弦楽
2.ト短調 ヴァイオリン2、チェロと管弦楽
3.ト長調 ヴァイオリンと管弦楽
4.ホ短調 ヴァイオリン4と管弦楽
5.イ長調 ヴァイオリン2と管弦楽
6.イ短調 ヴアイオリンと管弦楽
7.ヘ長調 ヴァイオリン4(チェロ助奏)と管弦楽
8.イ短調 ヴァイオリン2と管弦楽
9.ニ長調 ヴァイオリンと管弦楽
10.ロ短調 ヴァイオリン4(チェロ助奏)と管弦楽
11.ニ長調 ヴァイオリン2と管弦楽
12.ホ長調 ヴァイオリンと管弦楽
私のLP・・本日聴いた盤は持っていないが同じ指揮者、楽団のLP「四季」作品8を持っている。
     H28('16)7.7
 
    私のLPジャケット
     R.コルサコフ
  交響組曲「シェエラザード」
R.コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」 作品35
ボロディン   歌劇「イーゴル公」より ダッタン人の踊りと合唱
          合唱 青年合唱団 ローザンヌ放送合唱団
          エルネスト・アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団
シェエラザード
27.3.10 試聴済み カラヤン指揮 ベルリン・フィル
28.2.2    〃   本日の盤に同じ
28.5.31   〃    カラヤン指揮 ベルリン・フィル
上記の試聴時にコメント済みにつき今回は省略。
私のLP・・カラヤン指揮 ベルリン・フィル

ダッタン人の踊りと合唱
28.2.2 試聴済み 本日の盤に同じ。 今回のコメント省略。

バッハ ヴァイオリンとハープシコードのためのソナタ 第1番~第3番 
      
Vn.ハイメ・ラレード Pf.グレン・グールド
26.6.3 試聴済み、ただし第4番~第6番 本日の盤に同じ
ヴァイオリン・ソナタと言うとどちらかと言えば、ヴァイオリンを中心に展開して行く音楽と考えるが、バッハのこの作品はヴァイオリンとハープシコード(チェンバロ)が殆ど対等に活躍していて、実に和やかな対話のような作品となっている。それは、この作品がバッハが32歳のころから仕えていたレオポルト公のために書かれたもので、親愛と尊敬の情が強く込められた作品だからである。このレオポルト公はバッハよりも9歳年下で、熱烈な音楽愛好家であった。しかも、公自身もヴァイオリンやヴィオラ・ダ・ガンバ(チェロの前身)、ハープシコードなどを大変上手に演奏したという。本日の盤は、ハープシコードの代わりにピアノとの合奏になっている。バッハ弾きの名手あのグレン・グールドなのだ。バッハの音楽を深く追求し独自の世界を切り開いたグールドの演奏は、全体を通じヴァイオリンと見事にマッチしており、両者の織り成す音色には透明感があり素晴らしいものだった。演奏が終わり心の中で最大級の拍手を贈った。
     H28('16)7.12
 
       私のCD
シベリウス交響曲第5番、7番
  第4番保有せずこれを掲載
バッハ ヴァイオリンとハープシコードのためのソナタ
     第4番ハ短調 BWV.1017
     第5番ヘ短調 BWV.1018
     第6番 ト長調 BWV.1019
     Vn.ハイメ・ラレード Pf.グレン・グールド
26.6.3 試聴済み 本日の盤に同じ
前回第1番~第3番試聴済みでコメント記載済み。今回は省略。

シベリウス 交響曲第4番イ短調 作品63
        交響詩「タピオラ」 作品112
        エルネスト・アンセルメ指揮
        スイス・ロマンド管弦楽団
26.8.19 試聴済み 本日の盤に同じ
私のCD・・第5番、7番 カラヤン指揮 ベルリン・フィル
この第4番は第1番、第2番交響曲に示されたロマンティックなシベリウスが姿を消して、彼本来の真の姿が表れている。即ち、北欧の暗い海に峨〃と経つ険しい岩石のような音楽、しいたげられた民族の忍苦悲哀の表情が浮かぶ。ある人は「シベリウスの音楽の中には人が一人もいない」と言っている。シベリウスの生まれたフィンランドは、太古の神秘をたたえた黒い森と湖が広がっている。そうした北欧の淋しい大自然の情感を表した音楽が多い。フィンランドの民族的な情感を込めた音楽は私たちの心を揺さぶる。
    H28('16)7.14
 
    チャイコフスキー
     ピアノ三重奏曲
  (本日の試聴と同一の奏者)
シベリウス 交響詩「カレワラ」から四つの伝説
        レミンカイネンとサーリの乙女たち
        トゥネラの白鳥
        トゥネラのレミンカイネン
        レミンカイネンの帰郷
        サー・チャールズ・グローヴス指揮
        ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック管弦楽団
この試聴会初登場。シベリウスの国フィンランドは、北欧の厳しい自然に包まれた国で伝承的な伝説、古詩の多く残された国だ。ワーグナーの楽劇も北欧の伝説や昔話を基に作られたものだが、神秘で怪奇の深いものが多く幻想的な世界を作り出している。シベリウスのこの交響詩もフィンランドに古くから伝わる大叙事詩「カレワラ」に基づいて作曲されたもので、4つの曲からなる膨大な組曲だ。今ではこの4つが続いて演奏される事は少なくその中の「トゥネラの白鳥」と「レミンカイネンの帰郷」が分離して演奏されており、本日試聴の4曲同時は貴重なものだ。トゥネラはフィンランドの伝説では冥府の名だが、このトゥネラへ行くには9つの海と1つの三途の川を渡らなければならない。その暗い三途の川の青黒い流れには神聖な白鳥が浮かんでいて歌をうたっているという。物悲しい白鳥の歌がイングリッシュホルンの独奏によって始まり、弱音の弦とほのかな太鼓の連打が渦巻く流れを暗示しながら伴奏する。怪幻にして陰鬱な音楽だ。

チャイコフスキー ピアノ三重奏曲イ短調 作品50
            -ある偉大な芸術家を追慕して-
           Pf.ウラディーミル・アシュケナージ
           Vn.イツァーク・パールマン
           Vc.リン・ハレル
27.10.8 試聴済み 本日の盤に同じ
副題に付けられた「ある偉大な芸術家」とはチャイコフスキーの恩師であり無二の親友でもあったニコライ・ルービンシュタインを指している。そのニコライの逝去を深く悼み作曲、献呈した作品だ。全編に悲痛な情感が溢れチャイコフスキーのニコライを想う気持ちが切々と流れており胸を打つ。ピアノの名手だったニコライを念頭に作られたせいかピアノの活躍が目立つ。自分的には些かピアノが出しゃばり過ぎている感あり。以下手元の資料から転記。
1.悲劇的断片曲 最初の楽章に「哀悼曲」と記して、その中に悲しい想い出を物語っている。
2.主題と変奏曲 ニコライの逝去する数日前、チャイコフスキーが彼と共に過ごした田舎の一日を描いたものと言われる。美しい田園風の民謡が主題としてうたわれ、さらに変奏曲では亡命の性質や出来事が織り込まれている。
3.最終変奏部および結尾部 旋律は美しく効果は宝石をちりばめたようである。葬送行進曲の厳かな曲調が次第に遠ざかってゆくうちに曲は完結する。
   
    H28('16)7.21

    私のLPジャケット
  ブラームス 交響曲第4番
ワーグナー 「マイスタージンガー」前奏曲
        「タンホイザー」序曲
        序曲「ファウスト」
        「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
        ピェール・ブーレーズ指揮 ニューヨーク・フィル
27.11.26 試聴済み 本日の盤に同じ、コメント記載済みにつき今回は省略
私のCD・・ワーグナー序曲、前奏曲集 ベーム指揮 ウィーン・フィル

ブラームス 交響曲第4番ホ短調 作品98
         カルロス・クライバー指揮 ウィーン・フィル
26.8.5 試聴済み ケンプ指揮 ミュンヘン・フィル
私のLP・・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィル
ブラームスは、子供の頃からドイツの三大B(バッハ、ベートーヴェン、ブラームス)の一人として記憶に残っている作曲家だ。私の若かった頃フランソワーズ・サガンの小説「ブラームスはお好き」が映画化され、日本でも一段と有名になった。個人的にもチャップリン映画でハンガリー舞曲の一部が使われ印象に残っている。手元の資料を見ると、ブラームスが世に出るのは遅かった。全部で4つの交響曲を残しているが、第1番は43歳の時に作られている。この交響曲第1番はベートーヴェンは30歳、モーツアルトに至っては8歳、シューベルトも10歳の時だから如何にも遅い。然しながら、ベートーヴェンのような激しい性格でもなく、モーツァルトほどの頭抜けた天才でもなかったが、前述の如く三大Bとして名を残す遅咲きの大作曲家なのだ。この第4番は、52歳(1885年)の作品で彼の古典主義とロマン主義の二つの面から最も均整のとれたかたちで実現された美しい交響曲と言われている。それまでの作品に示された重厚さや悲壮感、ときおり顔を出すセンチメンタリズムから一歩突き抜けている感がする。50歳を過ぎ独身で過ごしてきたブラームスが、これまでの道のりを回想しながら人生の総ての経験を受け入れ、一歩高みから俯瞰している姿が感じられる。一説によれば、彼が死の床で「この第4番は自分の最も好きな曲だー」と言ったと伝えられている。一般的にベートーヴェンの曲がイメージとして希望に満ちた明るい曲だとすれば、このブラームスの交響曲第4番は渋く憂鬱な感じで、彼の晩年の孤独と悲哀が強く感じられる。 
    H28('16)7.26
 
    私のLPジャケット
   バッハ 「マニフィカト」
バッハ マニフィカト
     S.エリー・アメリンク    A.モーリン・レハーン
     T.テオ・アルトマイヤー  Bs.ローラント・ヘルマン
     テルツ少年合唱団   
     クルト・トーマス指揮   コレギウム・アウレウム合奏団
この試聴会初登場
私のLP・・S.ヴァルターガンペルト    A.アンドレアス・シュタイン
      T.テオ・アルトマイヤー   Bs.ジークムント・ニムスゲル
      テルツ少年合唱団
      ゲルハルト・シュミット・ガーデン指揮 コレギウム・アウレウム合奏団
これまで声楽曲はマーラー「大地の歌」、ワーグナーのいくつかの楽劇を聴いているが宗教曲は初めて。マニフィカトとはラテン語で「崇める」という意味。聖母マリアへの讃歌なのだ。ルカ伝第1章にある聖母マリアの言葉ー彼女が神の子キリストを胎内に宿し祝福を受けた時に発したものーに対して多くの作曲家が「マリア讃歌」として作っている。それらの中でも最も優れたものがこのバッハの「マニフィカト」と言われている。バッハが38歳(1723年)の作品で、クリスマスの為に書かれラテン語を歌詞とする12曲の間に、クリスマスの歌やドイツ語によるコラールを4曲挿入している。合唱、独唱、オーケストラで構成されている。
第1曲・・「わが魂は主と崇め」 輝かしく華やかな合唱曲
第2曲・・「わが霊はわが救い主なる神を喜び讃えます」 ソプラノの独唱曲
第3曲・・「主はこの卑しいはしたのために」 ソプラノ独唱曲
第4曲・・「どの時代の人々も」 5声部の合唱曲
第5曲・・「力ある方が私に大きなことをして下さいました」 力強いバスの独唱曲
第6曲・・「その憐みは主を恐れかしこむ者に」 アルト、テノールの二重唱
第7曲・・「主は御腕をもって力強い美を感じ」 力強い合唱曲
第8曲・・「権力ある者を王位から引き下ろされます」 テノールの独唱曲
第9曲・・「飢えた者を良いもので満ち足らせ」 アルトの独唱曲
第10曲・「主はその憐みをお忘れにならないで」 女声の二重唱
第11曲・「私たちの先祖たちアブラハムとその子孫に語られた通りです」 合唱
第12曲・「神に栄光あれ」 ラテン語の“グローリア”による大合唱
全体に崇高で宗教的な情感に満ちており感銘を受けた。平素全く宗教心の無い私でも実に敬虔な気持ちに満たされたコンサートであった。

ベルリオーズ 幻想交響曲 作品14
         ピエール・モントゥー指揮 ウィーン・フィル
次の試聴時にコメント済みにつき今回は省略
26.5.10 試聴済み アバド指揮 ウィーン・フィル
26.6.24   〃   アバド指揮 シカゴ交響楽団
27.2.19   〃   モントー指揮 ウィーン・フィル
私のLP・・ジョルジュ・プレースト指揮 シカゴ交響楽団 
    H28('16)7.28
 
    ベートーヴェン
   弦楽三重奏曲作品3
タルティーニ ソナタ ト短調「悪魔のトリル」
コレルリ    ソナタ 作品5の第12「ラ・フォリア」
ヴィターリ    シャコンヌ
ヴェラチーニ ソナタ イ長調 作品1-第7
         Vn.アルトゥール・グリュミオー
          Pf.リッカルド・カスタニョーネ.
試聴会初登場。私のような駆け出しのクラシックファンには殆ど馴染みのない作品。もちろん作曲家も知らない。手許の本で調べると、いずれも遥かバロック時代に活躍した音楽家たちなのだ。音楽史を見ると1550年~1750年ころの200年間、バッハとヘンデルを頂点とする時代をバロック時代と言っている。その時代の音楽家としては前記の二人を除くとヴィヴァルディが超有名で日本でも人気があり、私も彼の「四季」は数種類のLP、CDを持っている。
タルティーニ(1692~1770年)
イタリアの作曲家、ヴァイオリニスト。「自分の足元で悪魔がヴァイオリンを弾いている」という夢にインスピレーションを得て作ったと言われている。彼の作品はほぼ総てがヴァイオリン協奏曲とヴァイオリン・ソナタだ。この曲は今でも難易度の高い演奏至難な曲で、ヴァイオリニスト必須のレパートリーになっている由。
コレルリ(1653~1713年)
イタリア出身。ドイツ、パリを旅し帰国後ローマに居住、当時の法王に仕え毎週演奏を行っていた。同時に複数の貴族宅にも出入り音楽の奉仕をしていたが、絵画にも一見識を持っていた。平素は質素な生活を送っていたが、死後巨万の富と多くの絵画を残し人々を驚かせたという。バロック時代のイタリアを代表する大作曲家なのだ。この曲「ラ・フォリア」はポルトガルから発したスペイン舞曲で大らかな気品に満ちた曲だった。
ヴィターリ(1663~1745年)
イタリア・ボローニャ出身ヴァイオリニスト、作曲家。現存する作品は、ヴァイオリンと通奏低音のためのソロ・ソナタ、トリオ・ソナタなどが中心で最も有名なのがこのヴァイオリンと通奏低音のための「シャコンヌ」。19世紀のヴァイオリン奏者フェルディナント・ダーヴィトによってヴァイオリンとピアノのために編曲され、それが現在演奏される定型になっている。現在、シャコンヌと言えばバッハかヴィターリかと言うぐらい愛されているようだ。
ヴェラチーニ(1690~1768年)
イタリア後期バロック時代のヴァイオリニスト、作曲家。1711年ヴェネツィアで「8つの楽器のためのコンチェルト」を作曲し、神聖ローマ皇帝カール6世のための祭礼で演奏された。1712年タルティーニがこの演奏を聞き感銘のあまり自分の技巧を不甲斐なく思い自宅に逃げ帰り閉じこもった上練習に励んだ、という。
以上4曲、初めて聴いたがバロック時代の音楽はヴィヴァルデイで馴染んでおり心地よく聞き入った。400年余の時空を超えて音楽の“不滅性”を感じ、しばし感慨に耽った。

ベートーヴェン 弦楽三重奏曲 作品3
          Vn.ヤッシャ・ハイフェッツ
          Va.ウイリアム・ブリムローズ
          Vc.グレゴール・ピアテゴルスキー
試聴会初登場。弦楽三重奏はヴァイオリン、ビオラ、チェロ1本ずつの構成で、演奏される室内楽の形態。弦楽四重奏と比べヴァイオリンが1本減っており、より透明なハーモニーとなるが、西洋音楽の基本が4声体のため、鍵盤楽器の通奏低音によって和声を充填できるバロック時代のトリオ・ソナタが多く書かれたのに比べ作品の数はあまり多くない。因みにベートーヴェンの場合も弦楽三重奏曲は6曲、それに比べ4重奏曲は24曲、5重奏曲は6曲となっている。